中国のファーウェイはミステリアスな企業だ。AIチップ、ポータブルデバイスなどさまざまな分野で世界のトップクラスにあるが、企業の内部抗争は具体的に知られていなかった。米国ワシントン・ポスト紙のテック(科学技術)専門記者である著者は、その理由を、ファーウェイと中国共産党間の関係から探る。外見は民間企業、実際には国家戦略の手段であるファーウェイの二重性が、同社を秘密めいた存在にしているのだ。
【写真】ディスプレーが壊れたファーウェイの三つ折りスマホ「Mate XT」
著者は、ファーウェイの組織内部にある「共産党委員会」を取り上げている。委員会は、主要経営陣を監督する「監査委員会」、AIチップを手掛ける子会社ハイシリコンなどに影響を及ぼす。隠れた経営主体として中国中枢が入り込んでいるわけだ。ファーウェイの創業・成長史と人民軍出身の創業者・任正非の生涯を通して、いっそうしっかりとした流れをつくっている。
著者の取材力が本書の強みだ。直接ファーウェイの関係者にインタビューし、内部資料を集めた。ファーウェイが中国の「監視国家化」「新疆ウイグル弾圧」などで先導的な役割を果たしたように、当局の目標が企業を通してどのように実現されるのかを示す事例集という役割もある。584ページ、3万2000ウォン(約3400円)。
パク・チンソン記者