これまでのアニメ劇場版がテレビシリーズのダイジェスト版に過ぎなかったのに対し、『鬼滅の刃』はテレビシリーズにつながる新たな話を劇場版で公開している。制作会社が劇場版に果敢に投資した戦略も奏功しているのだ。富川国際アニメーション・フェスティバルのキム・ソンイル首席プログラマーは「ドラマで言えば結末直前に話を切り、盛り上がりの絶頂部分に総力を傾けて劇場版にしたということだ。次の話が気になるファンは映画館を訪れるしかない作りになっている」と説明した。テレビと映画館を行き来する新たな戦略と完成度の高さで観客が映画館に行かざるを得ない理由を提供すると共に、優れたクオリティーの映画が原作人気をいっそう高めている。
個性がはっきりしているキャラクターたちも人気の秘訣(ひけつ)の一つだと言われている。悪役である鬼たちですら単なる怪物ではなく、人間だった時代の数奇な運命や事情を持つ存在として描かれており、ファンダムを形成している。少年剣客が鬼たちを退治するという単純な構図だが、水・雷・炎などそれぞれ異なる「呼吸」を駆使し、戦いごとに違う見どころがある。ポップアップストアで会った大学院生ソ・チェリンさん(27)は「キャラクターの特性によって顔の模様まで違うほどディテールが生きていて、シーンの一つ一つがリアルだから、全部集めたいという欲が出てくる。『無限城編 第一章』も期待を裏切らなかった」と語った。
キャラクターが多様なので関連商品も続々と登場している。漫画・映画・アニメはもちろん、グッズ・ゲーム・舞台・テーマパーク・展示など多方面で知的財産権(IP)を活用している。 日本の経済誌「東洋経済」は「総額でいうと2020年(の時点)で1兆円規模の経済圏が形成されている」と分析した。
ペク・スジン記者、キム・グァンジン記者