韓国政府が今月7日、検察庁廃止を骨子とする政府組織改編案を発表した後、検察内部では反発が続いている。ある現職部長検事は「積極的な姿勢で夜勤までしつつ捜査を気取ってやっていた自分の愚かさを反省する」と、強く反発した。
本紙の取材を総合すると、大田地検で強力犯罪(凶悪犯罪)・麻薬犯罪捜査専担の刑事3部を率いる李柱勲(イ・ジュフン)部長検事=司法研修院38期=は「数日前に、(盧万錫〈ノ・マンソク〉)大検察庁(最高検)次長が『補完捜査は検察の権限ではなく責務』と内部でおっしゃったのに対し、某国民の代表と称される方が『これだから検察改革の話が出るのだ』と言ったという記事を見た」と切り出した。続いて「3人目を抱っこして一人、よその土地で生活していた2022年、特殊傷害の容疑で送致された事件があった」と、補完捜査の事例を紹介した。
この事件は、ある女性が焼酒(韓国焼酎)の瓶を割って振り回し、一緒に酒を飲んでいた男性の手首に傷を負わせたというのが核心だった。ところがこの女性は「ガラス瓶を割ったり破片に手を出したりしたことはない」と供述し、被害者の男性に暴行されて鼻の骨が折れた状況だったという。しかし警察は、女性の供述には信ぴょう性がないとして、起訴意見を付けて書類送検したのだ。
事件を割り当てられた李部長検事は、記録に含まれていた傷の写真を検討していて不審を感じた。被害者の手首の傷の様子は、向き合って座っている人間にはできない形態だったのだ。李部長検事が傷の写真を別に撮って専門医に問い合わせると、専門医はすぐに自傷と判断した。李部長検事は事件関係者を呼んで事情聴取し、傷を負った男性は結局、取調室でうその供述をしたと自白した。先に女性を暴行して鼻の骨が折れるや、手首を自傷して、自分が被害者であるかのように仕立てたのだ。補完捜査を通して「無念の加害者」を見抜いたというわけだ。
「ばかげた事件を正したことが誇らしいどころか、むしろ、もっと早く無念を晴らしてあげられなかったことが申し訳なかった」と明かした李部長検事。その上で「自分に割り当てられた事件を起訴すべきかどうか確信を得るため追加捜査をする行為は、権限ではなく責務だと思った」と語った。
しかし李部長検事は、今行われている検察改革の議論の過程を取り上げ「(自分のやったことは)出しゃばりで生意気な捜査権行使」だったとし「反省すべき理由になったように思う」と述べた。その上で「高齢出産で妊娠糖尿病になって野菜で延命していたころ、夜勤までしながら捜査した自分の愚かさを反省する」とした。民生関連の事件を専担する大多数の検事たちは、検察改革の議論の発端となった「標的捜査」とは無関係に最善を尽くしているということを、遠回しに表現したもの―と解されている。
なお、李部長検事は、ガリレオ・ガリレイが「それでも地球は動く」と語ったとされる故事を引用して「それでも検事は捜査をすべき。真実を知るために」と述べた。
イ・ミンジュン記者