中国が徹底して検察の力を奪ったのには、歴史的な流れがある。文化大革命の狂風が吹き荒れていた1966年、「4人組」の江青が紅衛兵に対し「公安・検察・法院を叩き壊せ(破爛公検法)」と扇動したのが始まりだった。司法機構が「資本主義のもの」だという理由だったが、その中でも「資本主義の司法」の象徴である検察が中心的な標的になった。各級の人民検察院が閉鎖され、検事たちは農村・工場へ下放された。1975年には憲法を改正し、検察制度そのものを廃止した。その後、文化大革命に対する反省で検察を復活させたが、捜査権は全て奪った。今の中国の司法システムは、共産革命イデオロギーの産物というわけだ。
中国の公安は共産党の支配を受ける組織だ。検察の「司法的」けん制ではなく、党の「政治的」統制で維持されるのが中国式の公安システム。韓国の民主党もまた、検察の捜査権・指揮権をはく奪し、政治的な口出しから自由ではあり得ない「国家捜査委」を首相の下に置いて捜査機関を監督させようとしている。中国と類似した構造でいこうというのだ。
民主党には、裁判所の独立性を尊重する考えも全くないとみられる。大法院長(最高裁長官)に向かって「そんなに大したものか」と嫌味を言い、「国会が(裁判部の割り当てに)ちょっと関与したいのだが」うんぬんという発言すらためらわない。なにか言うたびに「国民の意向」を掲げる民主党の「選出権力優位論」は、暴走に暴走を繰り返している。国会の多数党が思い通りにできるというその傲慢(ごうまん)さからは、どうしても、人民民主主義式の「党主導」体制が連想される。
民主党が中国モデルをベンチマークしたとは信じたくない。しかし参考にしていようとしていまいと、結果は同じ。権力分立を否定して司法権を政治に隷属させる「人民司法」は、中国を法治・人権の後進国にした。「内乱清算」を掲げる民主党の司法揺さぶりも、同じ道を歩むのだろうかと恐れるばかりだ。
朴正薫(パク・チョンフン)論説室長