「三権分立」→「三権序列」 韓国社会に忍び寄る人民民主主義の影【コラム】

権力分立240年史に「三権序列」の概念は存在せず

自由民主主義の価値を当然視してきた韓国人に李大統領の憲法認識は思いがけない不慣れなもの

 中国が徹底して検察の力を奪ったのには、歴史的な流れがある。文化大革命の狂風が吹き荒れていた1966年、「4人組」の江青が紅衛兵に対し「公安・検察・法院を叩き壊せ(破爛公検法)」と扇動したのが始まりだった。司法機構が「資本主義のもの」だという理由だったが、その中でも「資本主義の司法」の象徴である検察が中心的な標的になった。各級の人民検察院が閉鎖され、検事たちは農村・工場へ下放された。1975年には憲法を改正し、検察制度そのものを廃止した。その後、文化大革命に対する反省で検察を復活させたが、捜査権は全て奪った。今の中国の司法システムは、共産革命イデオロギーの産物というわけだ。

 中国の公安は共産党の支配を受ける組織だ。検察の「司法的」けん制ではなく、党の「政治的」統制で維持されるのが中国式の公安システム。韓国の民主党もまた、検察の捜査権・指揮権をはく奪し、政治的な口出しから自由ではあり得ない「国家捜査委」を首相の下に置いて捜査機関を監督させようとしている。中国と類似した構造でいこうというのだ。

 民主党には、裁判所の独立性を尊重する考えも全くないとみられる。大法院長(最高裁長官)に向かって「そんなに大したものか」と嫌味を言い、「国会が(裁判部の割り当てに)ちょっと関与したいのだが」うんぬんという発言すらためらわない。なにか言うたびに「国民の意向」を掲げる民主党の「選出権力優位論」は、暴走に暴走を繰り返している。国会の多数党が思い通りにできるというその傲慢(ごうまん)さからは、どうしても、人民民主主義式の「党主導」体制が連想される。

 民主党が中国モデルをベンチマークしたとは信じたくない。しかし参考にしていようとしていまいと、結果は同じ。権力分立を否定して司法権を政治に隷属させる「人民司法」は、中国を法治・人権の後進国にした。「内乱清算」を掲げる民主党の司法揺さぶりも、同じ道を歩むのだろうかと恐れるばかりだ。

朴正薫(パク・チョンフン)論説室長

【AI合成画像】「李在明大統領兼大法院長兼共に民主党総裁」

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