李真淑(イ・ジンスク)前放送通信委員会委員長が10月2日、自宅近くで警察に突然逮捕された。警察は「李真淑前委員長は3回以上も出頭要求に応じず、裁判所から逮捕状を発行されたため、逮捕した」と述べた。李真淑前委員長は公職選挙法違反と国家公務員法違反の容疑が持たれている。弾劾訴追されて職務停止となった昨年9月、動画共有サイト「ユーチューブ」の番組に出演し「(与党)共に民主党や左派集団は想像可能なあらゆることをやる集団だ」「エセ左派と戦う戦士たちが必要だ」などと発言したことが公務員の政治中立義務に違反したというものだ。
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李真淑前委員長側は「警察が出頭を要求した先月27日は国会で放送メディア通信委員会設置法案を巡ってフィリバスター(無制限の討論による議事進行の合法的妨害)が行われていたため、調査に応じられなかった」としている。李真淑前委員長の弁護人は「欠席理由書を提出し、口頭で説明したのにもかかわらず、逮捕状が執行された」と言った。この言葉が事実ならば行き過ぎた逮捕だと言えるだろう。李真淑前委員長は現行犯でもなく、証拠隠滅や逃亡の恐れがあると考えられる特別な理由も見当たらない。政治的に論争となる選挙法違反事件で逮捕までするケースは珍しい。
李真淑前委員長はこの前日の10月1日、放送メディア通信委員会法が施行されたことにより自動免職され、その翌日の2日に逮捕された。「新法の内容は事実上、放送通信委員会の看板を掛け替えるだけのもので、放送通信委員会ではなく李真淑前委員長の排除が目的ではないか」という指摘もあるが、事実である可能性が高い。ところが、今回はそのようにして追い出した人物を翌日、警察が逮捕までした。共に民主党は昨年全て、李真淑前委員長が就任した翌日に弾劾訴追案を発議した。たった1日の勤務で重大な憲法・法律違反を犯したというのだ。だが、それはさすがにこじつけが過ぎたのか、憲法裁判所も同弾劾訴追案を棄却した。共に民主党はその後、政権を握るや、李真淑前委員長に「任期を満了するのは難しいだろう」「すぐに起訴されるのではないかと思う」と辞任を迫ったが、結局そうなりつつある。
政権が変われば、前政権の人物を追い出すために、検察や警察の捜査などが動員されることはあった。しかし、たった一人を追い出すために弾劾訴追し、政府組織を改編し、逮捕までしたケースは見たことがない。李真淑前委員長が選挙法に違反したのなら、それ相応の処罰を受けなければならない。だが、この関連法は全ての人々に公平に適用されているだろうか。与党に所属する容疑者・被告たちの多くは裁判を引き延ばすうちに任期を終えることもよくある。李真淑前委員長をターゲットにした攻撃は行き過ぎだと言わざるを得ない。