トランプ・ショックは50年前のニクソン・ショックの延長線上にあると記者は考えている。衰退した米国は今とにかく現金を欲しがっている。トランプ大統領はニクソン大統領よりも過激で脅威だ。ギリシャの経済学者ヤニス・バルファキスは「ニクソンがこの世を去ってもニクソン・ショックの影響は残っている。同じようにトランプがこの世を去ってもトランプ・ショックの影響は残るだろう」と予想している。この言葉はトランプ・ショックが一時的なものでないことを示唆するものだ。日本は関税が15%だが、韓国に対する関税が今後も25%のままだと韓国の製造業は米国市場を諦めるしかない。しかも技術面で大きく発展した中国の破壊力は1970年代の「周4原則」程度で済まないだろう。中国は韓国のあらゆる産業を飲み込む万全の準備ができている。
しかし今韓国では年収1億ウォン(約1100万円)の労働組合員が週4.5日労働を要求しストを続けている。国会は企業の投資を美徳ではなく規制の対象と見なす法律を乱発している。不法なストに特権を与え企業経営者を潜在的犯罪者に仕立て上げた。投資以上に株主への配当や社員へのボーナスなどに資金を使う企業が拍手を受けるどこか薄っぺらい世の中になった。外患に内憂がプラスされたようなものだ。21世紀に入り国会で成立した法律は1970年代に成立した企業を後押しする法律とほぼ正反対だ。さらにたちが悪いのは政治家がビジョンを提示していないことだ。与党の政治家はトランプ大統領に対し「韓国を経済植民地にする破廉恥な蛮行」「鬼が稲の殻をむくような声(でたらめ)」などと容赦なく批判している。彼らの特技でもある「安っぽい反米」がまた始まったのだ。それでも国が発展できればそれは神のご加護だ。
米国と対立した韓国の大統領はこれまでも何人かいたが、その中で「同盟関係」を手にした李承晩(イ・スンマン)大統領と並んで朴正熙大統領が「本当の反米政策」を実行に移したと記者は考えている。朴正熙大統領は友好国との対立を国を発展させる力に変え、「道具としての反米」を最も知恵深く実行に移した指導者だった。後に対立の渦中で権威主義が暴走し政治家としての人生は悲劇で終わったが、彼の大胆でチャレンジ精神に満ちた経済政策は50年過ぎた今も国を生かすほど偉大だった。今の危機は1970年代前半よりも深刻だが、違うのは韓国経済の体力が当時よりも強いことだけだ。「安っぽい反米」もその体力のおかげで可能だが長続きはしないだろう。反米がしたければ朴正熙大統領のようにやらねばならない。
鮮于鉦(ソンウ・ジョン)記者