韓国警察が捜査権を独占する時代の「予告編」になりうる李真淑逮捕劇【10月9日付社説】

韓国警察が捜査権を独占する時代の「予告編」になりうる李真淑逮捕劇【10月9日付社説】

 李真淑(イ・ジンスク)前放送通信委員会委員長が警察に逮捕されてから50時間後に釈放された。裁判所はその理由を「表現の自由に対する制限を理由とする身柄拘束は慎重にする必要がある。逮捕の必要性が維持されない」としている。警察の逮捕状請求に無理があったことを指摘したものだ。

 警察は「李真淑前委員長に数回にわたり出頭を要求したが、応じなかった」という理由で逮捕した。しかし、李真淑前委員長側は「国会の日程による都合で欠席理由書を提出し、今後の調査に応じるとの意向を表明していたのにもかかわらず、逮捕された」と反論した。現行犯でもなく、証拠隠滅や逃走の恐れがあるとみるに足る理由もなかった。通常、選挙法事件で逮捕までするケースは珍しい。このため、警察の逮捕は行き過ぎだという声が多かったが、裁判所が一足遅れてブレーキをかけた形だ。

 今回の事態は、警察が過度に捜査権を振りかざした時、どんなことが起こるのかを示した象徴的な場面だとも言える。政権が変わった後に前政権の人物を追い出し、検察と警察が捜査に動員されたケースは多かったが、今回のように大きな議論となったことはまれだった。 与党・共に民主党が強行した司法改革の結果、警察が握ったとてつもなく大きな権限を考えると、さらに懸念が高まったと指摘する声が多い。先月末、検察庁廃止法案が可決されたことから、警察が捜査権を独占、あるいはほとんど握ることになる。政権の意向に沿った無理な捜査が行われても、適切にけん制する方法がほとんどない。裁判所しかけん制機関がなくなるのだ。

 ところが、共に民主党は裁判所が李真淑前委員長を釈放するや「だから国民は司法改革を訴えているのだ」と裁判所を非難した。共に民主党内部からも「警察が行き過ぎたと言わざるを得ない」(朴範界〈パク・ポムゲ〉議員)などの指摘が出ている状況で、警察をかばったのだ。捜査権を事実上独占することになる警察が、法的公平性と政治独立性を失って政権の影響を受ければ、李真淑前委員長のような事態が日常的に起こるようになるかもしれない。杞憂(きゆう)になることを願うばかりだ。

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