■検事なしの捜査班が取り調べ
男性を取り調べた捜査班は、金建希氏を巡る特別検察官の9つの捜査班のうち、唯一検事がおらず、警察と弁護士で構成された。元裁判官の文鴻周(ムン・ホンジュ)特別検察官補が指揮し、派遣された警察官12人と検事出身ではない弁護士2人で構成されたという。男性を取り調べた捜査官3人も全員派遣警察官だった。このため、最近問題になった李真淑(イ・ジンスク)元放送通信委員長に対する無理な逮捕状執行に続き、今回も警察による過剰捜査があったのではないかという疑いが指摘されている。
金建希氏を巡る特別検察官補4人のうち、検事以外の出身者は文氏が唯一だ。文特別検察官補は今年8月、ソウル拘置所に収監中の尹錫悦前大統領に対する逮捕状執行を指揮し、供述拒否が予想される尹前大統領に物理的な力を行使したことが論議を呼んだ。李成権(イ・ソングォン)国会議員(国民の力)は「捜査過程で人権保護の役割を果たすべき検事が抜けていたため、派遣警察官が過剰捜査を行ったのではないか。究明が必要だ」と話した。
■遺族に遺書を公開していない警察
死亡した男性は自筆メモのほかに遺書を残した。しかし、警察は男性の死因を明らかにするために捜査を進めているという理由で、男性が遺体で発見されてから3日目の12日時点で遺書を遺族にも公開していない。捜査関係者は「遺書の一部を撮影して遺族に見せた。筆跡鑑定後、遺族が望めば遺書を返却することになる」と話した。変死事件の捜査に必要な押収物なので、捜査終了までは公開しないこともあり得るとの説明だ。
しかし、国民の力の宋彦錫(ソン・オンソク)院内代表は「捜査に必要ならば、警察は写しを持っていけばよく、原本を遺族から奪る権利や権限はない」とし「故人を2度殺す蛮行に近いやり方だ」と批判した。国民の力は男性の死亡と関連し、「閔中基(ミン・ジュンギ)特別検察官暴力捜査特別検察官法」(仮称)を提案する意向を明らかにした。男性は前日公開されたメモに「侮辱と蔑視は本当に嫌だ」と記している。こうした状況からみて、警察が遺書を遺族に公開しない理由が釈然としないというのが国民の力側の主張だ。
一方、与党共に民主党は「故人の死を特別検察官非難の材料とし、政治的論理の道具として利用することは明らかな故人に対する冒涜(ぼうとく)だ」と主張した。
ユ・ヒゴン記者、キム・ナヨン記者、ヤン・インソン記者