李在明(イ・ジェミョン)大統領が「税関麻薬捜査外圧疑惑」を徹底して捜査すべきだとして、疑惑を最初に提起したペク・ヘリョン警正(警視に相当)の捜査チーム合流を指示したが、ペク警正は「既存のチームには行くつもりはない」と拒否した。ペク警正は「今の捜査チームについて、私は不法団体だと規定した」「捜査人員を支援してやるのであれば、新たなチームをつくる方法がある」と語った。警察署の課長級の警正が大統領の指示を拒否し、検察の公式な捜査チームを不法団体と決め付け、自分のための新しい捜査チームをつくってほしいという。誰が聞いても正常だとは思えない。
ペク警正は2023年、ソウル・永登浦警察署の刑事課長として在職中にマレーシア人のヒロポン密輸事件を捜査し、仁川税関の公務員が検疫と税関通過の便宜を図ってくれたという麻薬組織メンバーの供述を確保したという。だがその後、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領室、検察、警察などが事件を隠蔽(いんぺい)しようと外圧を行使した―と主張し始めた。左遷に相当する人事に遭ったとも言った。
まだ尹・前大統領などが介入したという根拠は出てきたことはないが、このように大統領まで乗り出す以上、事実であるかどうかを明らかにすべきだ。ところが当時捜査チームに所属していた警察官たちは、「税関職員たちが便宜を図ってくれた」という麻薬組織メンバーの供述しかない、と語っている。その上、関税庁は「警察が名指しした税関職員たちは、当日は年次休暇で勤務していなかったり、当該動線の出入り記録がなかったりする」とした。それにもかかわらずペク警正は9月に国会の聴聞会で「尹・前大統領夫妻が内乱資金関連の麻薬輸入独占事業をした」という主張まで行った。こんな荒唐無稽な主張をしている人物の話を信じられるのか。
この事件は李在明政権発足直後の今年6月に検察と警察、国税庁、金融情報分析院が合同捜査チームを立ち上げて捜査中だ。捜査結果を待てばいいのに、李大統領は今月12日に突然、事件についての徹底した捜査を注文した。その理由が何なのか気になるところだ。新たな証拠が出たわけでもない。大統領が法相を飛び越えて捜査チームに特定事件の捜査を直接指示し、捜査官の人事まで指示するというのは、違法の余地がある。こんなことをする理由が何なのか、いまだに分からない。
李大統領が「尹・前大統領夫妻が内乱資金を準備するために麻薬輸入事業をやった」というペク警正の話を信じているわけではないだろう。だとしたら大統領が乗り出す理由は何か。