韓国の検事(韓国語で「剣士」と同じコムサ)たちは、大庄洞一味(京畿道城南市大庄洞の土地開発を巡る背任事件の中心人物たち)の控訴を放棄したことで、犯罪者たちが数千億ウォン(約数百億円)に達する犯罪収益のほとんどを懐に収める道を開いてやった。大庄洞一味は、自分たちの財産の凍結解除を要求しているが、与党側は必死で被害額(追徴できなくなる額)を少なく見せかけ「民事訴訟で回収すればいい」と呑気なことを言っている。大韓民国では悪党たちは断罪されず、逆に政界の庇護を受けているのだ。これは大庄洞事件に限った問題だろうか。入試不正、開発不正で捜査を受けている政治家たちは、もう長いこと烈士あるいは崇高な被害者になりすましている。慰安婦被害者の女性たちをダシにして支援金を横領しても、難なく国会議員の任期を全うできる。一方で、正義と公正を求める若者たちは「能力主義にまみれた極右」という非難を浴びせられる。
政府・与党は一部の政治検事を問題視し、司法体系全体を揺るがしている。文在寅(ムン・ジェイン)政権が検察・警察間の捜査権の調整を強行して以降、資本市場法違反、電子金融取引法違反など主要な経済犯罪事件が一審で無罪になる確率が急上昇したが、この事実には目をつぶっているようだ。検察が立件した麻薬事犯も2020年の5974人から23年には8342人へと39.6%も増加した。詐欺犯と麻薬事犯が急増しているのに、捜査指揮の空白によって検察と警察は互いに責任を押し付け合っている。被害者たちは探偵の役割をしてくれる弁護士を探すなど自力で解決の道を探し始めている。
検察庁の廃止によって国民的な被害が大きくなるとの懸念が上がっても、政府・与党はその声に耳を貸そうともしない。陣営の論理という鬼は、常識を破壊して市民生活を食い荒らす。犯罪者が守られ、捜査と裁判を担当した判事・検事が侮辱されるという奇異な現象は現在も続いている。この国でまともな勧善懲悪が実現するのを望むのは欲張りなのか。大韓民国の明日のために「正義と常識の刃」を振りかざしてくれる検事はいったいどこにいるのだろうか。
イ・ドンス世代政治研究所代表