明確な基準がない「虚偽情報」「操作情報」…口封じ訴訟招く恐れある情報通信網法改正案可決・成立に韓国各界から懸念の声

 共に民主党は法案に「公共の利益を目的とする正当な批判や監視活動を妨害する目的」の場合は報道機関などが裁判所に「中間判決」を申請できるとしている。公職選挙の候補者、公共機関のトップ、企業の役員や大株主などが損害賠償請求を行い、これを裁判所が「中間判決」でその訴訟を却下した場合、原告に却下判決を公表もさせるため、権力者による訴訟の乱用はないと共に民主党は説明している。これに対して中央大学の李仁浩(イ・インホ)教授は「裁判所に司法判断以上の負担を押し付け、恣意(しい)的な判断を強いるものだ。司法への信頼を傷つける結果しか生み出さないだろう」と批判した。

■強大な権限を持つ放送メディア通信委員会

 共に民主党は虚偽の流布に伴う名誉毀損(きそん)を処罰する条項は「親告罪」にしないと定めた。親告罪は被害者が処罰を望まなければ捜査・起訴・処罰が行われない犯罪だ。

 共に民主党は当初、国会科学技術情報放送通信委員会の審査で虚偽による名誉毀損を親告罪とした。ところがその後の国会法制司法委員会では親告罪の条項が削除された。法律に詳しいある専門家は「批判的な世論の手なづけに活用される可能性がある」と指摘する。

 共に民主党は事実摘示による名誉毀損罪も科学技術情報放送通信委員会ではいったん削除したが、法制司法委員会などを経て最終案に再びこれを残した。東国大学のキム・サンギョム名誉教授は「世界的にも前例のない難しい罪だ」「これに懲罰的損害賠償まで導入されれば、メディアに二重の法的負担を負わせることになる」と懸念を示した。

 報道機関関係者などからは「虚偽・操作情報かどうかを国が判断し、禁止するものだ」と批判の声が上がっている。この法案では損害賠償訴訟の対象となるジャーナリストやユーチューバーなどは大統領令で定められるという。現政権で発足する放送メディア通信委員会がその業務を主に担当する見通しだが、委員長は進歩(革新)系憲法学者の金鍾哲(キム・ジョンチョル)延世大学法学専門大学院教授だ。

 韓国言論法学会のシム・ソクテ会長は「放送メディア通信委員会の意向に沿って報道機関に巨額の課徴金を支払わせるものだ」と批判した。ある野党関係者は「強大な権力を持つ放送メディア通信委員会が勝手な基準を設けて政権に批判的なメディアやユーチューバーだけに課徴金を支払わせないと誰が断言できるのか」と懸念を示した。

キム・ジョンファン記者、クォン・スンワン記者、シン・ジイン記者

【表】共に民主党が可決・成立させた情報通信網法改正案の問題点

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