韓国与党・共に民主党は24日の国会本会議で報道機関やユーチューバーに対して最大5倍の懲罰的損害賠償請求を可能とする情報通信網法改正案を可決・成立させ、さらに新聞社や放送各社などを念頭に言論仲裁法改正案も検討している。この改正案は記事以外の社説やコラムなどに対しても反論報道を請求できるとし、具体的な訂正報道掲載の方法も強制できるとしている。メディア関係者などからは「表現の自由抑圧と報道機関の編集権を大きく侵害する『言論猿ぐつわ法』だ」と反発の声が上がっており、野党などからも「李在明(イ・ジェミョン)政権による新報道指針」として破棄を求める声が相次いでいる。
共に民主党のノ・ジョンミン議員が代表として先月提出したこの改正案は、新聞記事の一部社説に対して訂正や反論報道を義務づける場合、元の報道紙面の最上段に掲載するよう定めている。例えば1面記事であれば1面最上段に、2面の記事であれば2面最上段に配置しなければならない。またテレビ番組は出演者が登場した後の最初の順序に字幕表示を義務づけている。
訂正報道が請求できる期間もこれまでの「既存の報道について知った日から3カ月以内」「報道後6カ月以内」から「報道後2年以内」へと大幅に延長された。また言論仲裁過程で報道に対する立証責任は報道機関側に義務づけた。関連資料も2年間保管し、損害賠償請求が行われれば報道機関側が裁判所にこれを提出しなければならない。報道の出所を明確にし、引用元の記事まで言論仲裁対象に含めるなど、仲裁対象の範囲も広げられた。
共に民主党は李在明(イ・ジェミョン)政権発足後、フェイクニュースに対する懲罰的損害賠償請求を可能とする言論仲裁法改正案の制定を目指してきた。しかし李在明大統領が今年9月「言論仲裁法には手を付けるな」と指示しブレーキがかかった。韓国大統領室の関係者は「フェイクニュースは報道機関よりもユーチューブなどによる被害の方が大きいため」と説明した。これを受け共に民主党は情報通信網法の改正を目指す考えを明らかにした。
しかし共に民主党の強硬派が「懲罰的損害賠償などを削除した場合でも、言論仲裁法は改正すべきだ」と主張したため再び検討が始まった。共に民主党は今月19日に国会文化体育観光委員会法案審査小委員会に改正案を提出したが、これに政府と最高裁判所は懸念を表明した。裁判所行政処は「論評の機能を過度に萎縮させる恐れがないか検討すべきだ」とコメントした。韓国文化体育観光部(省に相当)も「言論や表現の自由を萎縮させる恐れが高い」「報道機関が全ての報道内容を完璧に立証する自信がなければ、公益的報道や批判的報道をためらう恐れが出てくる」と指摘した。
メディア関係者や学会からも懸念の声が相次いでいる。韓国新聞協会は「情報へのアクセスが制限された公権力や大企業についての報道の場合『立証不可能による敗訴』へと続く構造が形成され、公益的監視報道が萎縮するだろう」と表明した。漢陽大学メディアコミュニケーション学科のイ・ジェジン教授は「報道機関への規制が今後も拡大され、『規制万能主義』に向かうことになる」とした上で「この法案が懲罰的損害賠償制度とつながれば、権力側は報道機関に対して訴訟を乱発するだろう」と警告した。中央大学の李圭皓(イ・ギュホ)教授は「通常の民事事件でも原告側が被害を立証する義務があるが、この法案では報道機関側に証明責任を負わせている。これは従来の法体系とも矛盾する」と指摘した。東洋大学の陳重権(チン・ジュングォン)教授は「情報通信網法に続いて言論仲裁法まで成立すれば、正しいことも言えない世の中になるだろう」と予想した。ただし共に民主党関係者は「言論仲裁法改正案は党として成立を目指すものではない」とコメントしている。
ユ・ジョンホン記者