■「自動運転の普遍化は時期尚早」
今回の事態をきっかけに、自動運転を巡り「人間が介入しない自動運転車両の普遍化は時期尚早」という指摘が出ている。自動運転の技術自体は高度化してきているが、技術自体の限界に加え、都市のインフラ障害などによって発生する不測の事態が、都市全体をさらに大きな混乱に陥れる可能性があるからだ。今年初めに行われた米自動車協会(AAA)のアンケート調査によると、米国で運転しているという回答者の約3分の2が、自動運転車両に対して怖さを感じると答えた。
また、交通システムなど都市のインフラが不十分で、無人の車が道路を自在に走行できる状態ではないとの指摘も出ている。道路工事のようなインフラの変化への対応に加え、停電のための補助電力網、常に遠隔制御が可能な通信網などを同時に整備する必要があるというわけだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)交通センターのブライアン・ライマー研究員はCNBCに対し「サンフランシスコでウェイモの運行が停止したのは、各都市が、高度に自動化された車が道路にあふれる事態にまだ対応できないということを示している」と述べた。
無人タクシーが徐々に一般的になってきたことで、このような懸念はますます高まっている。サンフランシスコではウェイモだけでなく、テスラやアマゾンの子会社Zoox(ズークス)も無人タクシーに参入しており、「無人タクシー戦争」がぼっ発している。米国のIT専門メディア「テッククランチ」によると、ウェイモは米国全域で約2500台を運行中で、このうち約800台がサンフランシスコを含むシリコンバレーにある。Zooxとテスラも無人タクシーを商業化し、勢力を拡大している。特に最近では、ウェイモが市内だけでなく、制限速度が時速105キロの高速道路まで走行できるようになるなど、サービスエリアも広がっている。
シリコンバレー=カン・ダウン特派員