魏聖洛(ウィ・ソンラク)国家安保室長が2日、情報通信網法改正案(虚偽操作情報根絶法案)に関連して「米国側と意見交換があったが、米国の立場からは十分でないと見ることもあり得るだろう」と語った。法案の国会通過前から米国側の懸念があったが、きちんと解消できなかったという意味だ。フェイクニュース根絶を掲げて押し付けた法案が、「言論の自由の侵害」論争にとどまらず韓米間の通商紛争に発展しつつある。
【表】共に民主党が可決・成立させた情報通信網法改正案の問題点
米国の抗議は、法案の国会通過直後、強硬に続いている。米国務省が12月31日に「韓国政府が表現の自由を弱める改正案を承認したことに対し、重大な懸念を表する」とコメントしたのに続き、1月1日に予定されていた韓米FTA共同委員会の非公開会議が突如キャンセルされた。
米国は表現の自由を掲げているが、グーグル・メタなど米国のビッグテック企業がこの法律に基づく規制を受けることへの反発、という性格もある。今回の改正法はプラットフォーム事業者に対し、「虚偽操作情報」をモニタリングして即刻削除しなければならないと定める等、責任を大幅に強化した。韓国政府が直接検閲するとなると法的な負担が大きいので、グーグルやユーチューブといったプラットフォーム企業に、論争の余地があるコンテンツをまず消させることを図ったのだ。米国企業の立場からは、韓国政府が気に入るようなアルゴリズムの運営を強要されることになり、この点について非関税障壁だと反発しているのだ。かつて欧州連合(EU)のデジタルサービス法(DSA)導入時に米国が見せた強い反発を考慮すると、今回の事態は十分に予見できたことだった。それにもかかわらず、このように向う見ずに押し付けたことを巡って、「批判メディアにくつわをはめるためには友邦との通商摩擦も辞さないということではないか」という指摘が出ている。
今回の改正法の核心である「虚偽操作情報」の定義はあいまいだ。「悪意的」という完全に主観的な物差しで情報の削除を強制し、処罰できるようにしたことは、言論の自由の根幹を揺るがしかねない。記者協会など言論団体や参与連帯などは「この法は国家による検閲システムを構築するもの」だとして糾弾している。与党側が語るフェイクニュースの相当部分は金於俊(キム・オジュン)など親与党系のネットメディアから出ているのに、与党側は肝心のこうした人々に対してはいかなる問題提起もしていない。
今回の法案は、国内では言論の自由を侵害するという批判を浴び、国外では米国との通商摩擦に巻き込まれている。韓国政府と与党は、今からでも、現実をきちんと見て毒素条項を全面修正しなければならない。フェイクニュース対応は必要だ。だが、今の時点でも、フェイクニュースを処罰できる民事的・刑事的法律はある。それにもかかわらず、フェイクニュースを量産してきた親与党系メディアではなく批判メディアを狙った法律をまた作るという。その狙いが何なのかは明らかだ。