北朝鮮が「昨年9月と今月4日に(韓国が飛ばした)無人機を撃墜した」と主張し、これに対して韓国国防部(省に相当)が「韓国軍の作戦ではない」として「民間の無人機だった可能性を視野に調査を行う」と説明した。李在明(イ・ジェミョン)大統領は「(民間の無人機との見方が)事実とすれば、韓半島の平和と安全に脅威となる重大犯罪だ」として軍警に捜査チームの立ち上げを指示した。すると翌日に金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は「本質は行為者が軍部か民間かではない」「尹家であれ李家であれこちらにとっては全く同じ挑発」と再び批判した。また国防部の「挑発の意図などない」との表明に金与正副部長は「それも延命のための賢明な選択だ」と指摘した。
北朝鮮の「韓国側から無人機が飛ばされた」との主張は完全に一方的なものだ。昨年9月にそれまで静かだった北朝鮮が第9次労働党大会直前、北朝鮮住民が目にする労働新聞を通じてこの内容を発表したが、これは挑発の大義名分を事前に準備する狙いがあったとみられる。しかし青瓦台(韓国大統領府)と国防部は無人機がどこから飛ばされたか調査もせず「こちらから飛ばしていない」と表明し、李在明(イ・ジェミョン)大統領は民間の無人機だった可能性を念頭に「重大犯罪」と主張した。北朝鮮の一方的な主張に振り回されて韓国国民が突然捜査対象となり、その上金与正副部長が「賢明な選択」などとして韓国軍を侮辱する口実を提供したのだ。
北朝鮮には無人機問題で韓国を非難する資格などない。北朝鮮は2014年以降、確認できただけで少なくとも10回以上無人機による挑発を続けてきた。2017年に江原道麟蹄郡に墜落した北朝鮮無人機からは慶尚北道星州のTHAAD(在韓米軍の高高度防衛ミサイル)基地などを撮影した551枚の写真が見つかった。青瓦台上空を撮影した写真も確認されたが、北朝鮮は自分たちの犯行とは認めていない。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権当時の2022年12月に北朝鮮は5機の無人機をソウルとその周辺に飛ばし、うち1機は韓国大統領室上空の飛行禁止区域にまで侵入した。
ところが当時野党代表だった李在明大統領と共に民主党は無人機挑発について北朝鮮を非難せず、逆に韓国政府に対して「隠ぺいした」と非難し「衝撃的な安全保障上の大惨事」として内閣改編と大統領の謝罪を要求した。挑発したのは北朝鮮なのに、北朝鮮を非難せず韓国政府を先に非難したのだ。その李在明大統領が今度は「重大犯罪」として民間に矛先を向けた。
李在明大統領は最近、南北対話に何度も意欲を示し「こちらが長きにわたり北朝鮮に軍事的攻撃行為を続けたため、北朝鮮は不安に感じたはずだ」と事実とは完全に食い違う発言を行った。これまでに相次いだ武力挑発や無人機による挑発行為は全て北朝鮮が先に仕掛けてきたものだ。李在明大統領は北朝鮮に自国民が抑留されている事実も、また北朝鮮住民がインターネットを使えないことも知らなかった。北朝鮮との対話を目指すのであれば、まずは事実関係から正確に把握すべきではないのか。