「敵対的2国家論」は、北朝鮮住民に対する、南の方は仰ぎ見てもいけない、考えてもいけないという脅しだ。互いに気にせず過ごそうと言いながら、実際には韓国メディアが報じる大統領や主要人物の発言、果ては政府当局者の言葉にまでいちいち突っかかるのは、どう考えても韓国政府を手なずけようとする「ガスライティング(誤情報を与えたり嫌がらせを続けたりして、相手を心理的に支配しようとする虐待の一種)」だ。北朝鮮住民にも分かりやすく言い換えるなら「惑わされて殺される」くらいになる。
金正恩は、政権樹立1年目の2012年に新年の辞で、国家発展の目標として「社会主義文明国の建設」を提示した。北朝鮮内閣の内部文書には20年までに、靴下3500万足、質の良い靴6000万足を生産して人口1人当たり2-3足の靴が行きわたるようにする、という目標が含まれていた。少し前、金正恩が出席した白頭山近くの三池淵ホテルの竣工式に動員された北朝鮮の女性たちは、真冬の寒さにもかかわらずマフラーも手袋もないまま、春・秋に着用する薄いスキンカラーのストッキング姿で最高指導者を迎えた。文明国の女性は、真冬にそんな服装で凍えるようなことはしない。
5年前の第8回党大会で、金正恩は経済の失敗を自ら認め、長々と9時間も演説した。今や、過去5年の成果を評価して今後5年間の対内・対外政策の方向を確定させる第9回党大会が目前だ。だが北朝鮮住民の暮らしは依然として「いつもこんなありさま」にとどまっている。その責任を押し付ける上で、韓国は手頃な相手だ。だが「自力更生」のスローガンを叫ぶばかりで体制のリーダーシップ維持のために責任は外部に転嫁するという「対南ガスライティング」を続ける限り、北朝鮮は決して真の文明国にはなり得ない。
核・ミサイル技術ばかり高度化してどうするのか。住民たちの衣食の問題が解決しない限り、文明国など思いもよらない。第9回党大会は、住民たちの実質的な暮らしを直視し、核武力強化を優先する根本的政策基調が変化する機会になるべきだろう。
キム・ミンソ記者