第三に、国際社会の常識に反するからだ。2011年の福島原発事故後、世界各国が日本産水産物の輸入規制を行ったが、現在ではほぼすべて規制を撤廃している。現在、日本産水産物の輸入規制を行っている国は中国、ロシア、そして韓国だけだ。韓国は福島産農産物も輸入禁止にしているが、福島県の農産物輸出は急増している。2011年の原発事故直後に90%減少した農産物輸出は、2017年から急増(213トン)に転じ、事故発生前の2010年の水準(153トン)を突破した。そして、2024年には898トンを輸出して、なんと前年(453トン)の約2倍にまで伸びている。世界中で福島産農水産物を積極的に輸入しているのに、中国・ロシア・韓国だけが禁止しているのだ。
第四に、李大統領の「毒物」発言は、日本が民主国家であることを無視した行為だったからだ。日本は処理水を釜山沖で放出しているわけではない。自分たちの海で放出している。その水が「毒物」ならば、誰が最初に被害を受けるのだろうか? 民主国家の政府が自国民の健康に害を及ぼす行動をこのように公然と行えば、それは相手にする価値もない「失敗国家」だ。そのような「失敗国家」に行って首脳会談をした李大統領は何をしようとしていたのだろうか?
最後に、「毒物」発言は日本人の胸の傷口に塩を塗り込むようなものだったからだ。福島は日本で最も深刻な被災地だ。どの国でも被災地に対して国民たちは胸を痛めるものだ。今でも毎年3月になると日本では東日本大震災のドキュメンタリー番組が放送され、それを見て涙する日本人も多い。ところが、李大統領は「毒物」などと過激な発言をした。他人の傷口に塩を塗り込んでおきながら、今になって一言も説明せずに「我々も君たちの農水産物を少し食べてみようか」などと言うのは厚かましいのではないだろうか?
趙顕長官は、李大統領の発言について、裏を返せば「大統領として実用的な外交を実践するということだ」と言った。よくぞ言った。そう言うなら、李大統領が過去に発した「国内政治用」の過激な発言にしがみついて青瓦台(大統領府)の顔色をうかがい、ありもしない健康上の危険性や針小棒大な誇張にきゅうきゅうとするのではなく、長官としての政務感覚を発揮し、李大統領の過去の過激な発言から脱却する出口戦略を模索すべきではなかったか。安圭佰(アン・ギュベク)国防長官が日本に行き、小泉進次郎防衛大臣と卓球をしている姿を見ただろう。かつて火器管制レーダー照射まで取り沙汰された韓日両国の軍隊は、今や韓国空軍の特殊飛行チームが沖縄に寄り、中間給油を受ける関係にまでなった。
趙顕長官に、小泉防衛大臣が以前言ったように福島沖に行ってサーフィンでもしろという話ではない。外交長官として日本に行く機会があれば、福島にも立ち寄って刺身の一皿でも召し上がってみてはいかがだろうか、ということだ。共に民主党の党員生活もかなり長くなさっている趙顕長官にとって、それぐらいの政治感覚は期待してもいいのではないだろうか。
張富丞(チャン・ブスン)関西外国語大学外国語学部教授