「韓国の通常戦力は世界5位」 統計の盲点を直視しよう【寄稿】

自主国防の根拠として引用されるが、核兵器抜きの戦力なので限界は明らか
兵力の量と質、精神力で劣勢…韓米合同演習縮小の誤判を防げ

 ドイツの戦略家クラウゼビッツは、名著『戦争論』で「戦闘力は精神的要素と物理的要素で構成されるが、戦闘を決定づける要素は精神的戦闘力」と述べた。無形の士気などが有形の物理的要素よりも重要だったケースは、世界の戦争史にあまたある。現在の韓国軍は人口減少による兵力の質的・量的低下、幹部の使命感や力量の下落、長期的な平和の基調で柔弱な文民主義が拡散したことなどで、精神的戦闘力は高くない。逆に「党性」でがっちり武装した北朝鮮軍は、ウクライナの戦場で得た実戦経験と核兵器を除いても、軽視できない戦力だ。

 第三に、軍事力は相対的なものという属性をGFPは無視している。韓国が世界的な軍事強国と評価されても、北東アジア地域に局限すると話は違ってくる。北東アジアにおける4大軍事超大国の軍事力密集度は「過密」以上だ。4大強国の北東アジアにおける戦力配置図は、5位という順位を霞んだものにしてしまう。北朝鮮と中国、ロシアのほか、「7位」と発表された日本の軍事力も侮れない。今年の国防予算が65兆ウォン(現在のレートで約7兆1000億円。以下同じ)の韓国の通常戦力が、防衛予算9兆353億円(2026年度当初予算案、韓国ウォンでおよそ83兆ウォン)の日本より優位にあるというのは理屈に合わない。「戦争ができる国」への改憲が行われたら、日本の軍事力増強は想像以上だ。

 最近、トランプ大統領の信任を受けている米国のエルブリッジ・コルビー国防次官が韓国を訪れ、韓国の「責任分担(burden sharing)」を強調した。「北朝鮮抑止の1次責任を負う能力」が韓国にあるとして、米国は一歩引いた。根拠は、韓国が「通常戦力世界5位」だということだった。統制権移管を自主国防だと理解している自主派は、コルビー次官の認識をもろ手を挙げて歓迎するが、米国の後退が韓国の安全保障にどのような影響を及ぼすかは、小さな子どもでも理解できる。

 最後に、営利目的のGFPの統計に対する無条件の信頼は禁物だ。米中央情報局(CIA)は軍事力ランキングを公開したことがあるが、核兵器の増加などで軍事力評価に限界があり、2007年以降は取りやめた。他の国や機関もまた、軍事力推計の複雑さから軍事力の順位発表を取りやめた。

 機械的な指標を基にした通常戦力の順位は、参考資料に過ぎない。過度の引用や政策根拠としての活用は禁物だ。特に、政治的活用は慎重でなければならない。韓国の軍事力5位は意味ある成果だが、戦争の勝敗を決するのは順位表ではない。核戦力・通常戦力を統合した軍事力比較モデルの開発が必要だ。核兵器を含む戦力の総体と確固たる精神的戦力に基盤を置いた、総合軍事力評価が行われなければならない。第9回党大会で金正恩(キム・ジョンウン)が自ら運転した、核弾頭の搭載も可能な600ミリ超大型放射砲(多連装ロケット砲、KN25)は、韓国全域を射程に収めている―という平壌発のニュースが、今の韓半島の現実だからだ。こんな事態にもかかわらず、米国の装備と兵力が既に到着している状況で韓米合同演習すら国防相が抗議するなど不協和音を生んでいるのは、一体誰を意識したものなのか、全く嘆かわしい。

南成旭(ナム・ソンウク)淑明女子大碩座(せきざ)教授・元国家安保戦略研究院長

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