韓国政府が、国内生産ナフサの輸出を禁止するという強硬な需給対策を今週にも施行する。石油化学業界が原料の枯渇で工場を止める「シャットダウン」が現実味を帯びるや、緊急の処方を打ち出したのだ。ほんの数日前まで「需給に問題はない」と言っていた韓国政府の判断は結果的に無意味になった。今の状況は、国際エネルギー機関(IEA)の事務総長が「過去2回のオイルショックとウクライナ戦争の余波を全て合わせたレベル」だと述べて史上最悪のエネルギー危機を警告しているほどだ。
【図】「シャワー時間短縮」「スマホ充電は昼間だけ」韓国政府の省エネ国民運動の具体例
「産業のコメ」であるナフサの供給網が崩壊したら、石油化学のほかにも、造船・鉄鋼・自動車など韓国の主力産業がドミノ倒しのように打撃を受ける。造船や鉄鋼のさび止めペイントや特殊保護用の油は、全てナフサで作っている。自動車はタイヤ用のゴムやシート用の繊維の生産が困難になり、生産ラインが止まりかねない。市中で従量制ごみ袋の買いだめ現象が起きるほどに不安感が高まっている。
韓国政府は、今回のエネルギー危機が長期化することもあり得るという前提で対応システムを稼働させるべきだ。カタールが、液化天然ガス(LNG)施設の復旧に3年かかるとして「不可抗力」を宣言したのは、仮にあす戦争が終わっても、以前のように工場を回そうと思ったら相当な期間を要する―という意味だ。しかも海上保険料と戦争リスク割増料は、前例に照らしてみると、終戦後もすぐには下がらない。エネルギーを輸送する基本コストそのものが構造的に高くなるのだ。特に、ひとたび稼働を止めたナフサ分解施設(NCC)は、再び火を入れて正常に稼働させるまでに数週間もの時間と巨額の費用がかかる。
韓国政府と与党は、現在推進している25兆ウォン(約2兆6500億円)規模の補正予算の性格を、もっとはっきりさせる必要がある。「エネルギー危機補正」らしく、歓心を買おうとするような支援はできるだけ排除して、エネルギー安全保障強化とナフサ代替原料確保のための設備支援、エネルギー節約事業支援などに集中投入すべきだ。原価の上昇があおる物価不安にも先手を打って対応し、原発の稼働率を速やかに正常化し、LNG依存度を下げなければならない。公共交通機関の利用と節電に対するインセンティブも、より積極的に検討すべきだ。