80代半ばの両親は数年前に故郷へ戻り、農業を営みながら暮らしている。主にトウガラシやサツマイモを植えているが、「なぜそんな重労働をするのか」と止めても無駄だ。作物を育てて子どもたちに送る楽しみを手放すことはできず、農業をしていれば忙しくて認知症になる暇もない、というのが両親の言い分だ。
忙しく暮らせば認知症にならないというのは、単なる生活の知恵にとどまらない。これを裏付ける研究結果が海外メディアで報じられた。米デューク大学の研究チームが85-89歳の米国の高齢者を対象に認知症の発生率を調査したところ、40年前は10人に3人の割合だった認知症患者の数が、2024年には10人に1人の割合に減少した。オランダのエラスムス研究センターが北米と欧州の6カ国の高齢者における認知症の発症率を追跡したところ、10年ごとに13%ずつ減少したという調査結果も発表された。
この二つの事例は、認知症の未来に関する長年の予測を覆すものだ。現在、世界で5500万人が認知症を患っており、この数字は今後30年間で2倍に増える―というのが通説だった。認知症による社会的コストも天文学的に増加し、2019年の2兆8000億ドル(現在のレートで約460兆円。以下同じ)から2050年には16兆9000億ドル(約2750兆円)に達すると試算されていた。これには高齢化に伴う高齢者の増加と認知症患者の増加率がほぼ等しいという前提があった。韓国国内のある医科大学の発表でも、2016年から昨年までの10年間で65歳以上の高齢人口が678万人から1050万人に約55%増える間、認知症患者の数も60万人から95万人に58%増加していた。
認知症を患う高齢者の絶対人口が増加してきたのは事実だ。韓国の認知症高齢者人口も今年、100万人を突破する。韓国の50代が最も恐れる病気が「がん」から「認知症」に変わったのも、「認知症患者100万人」時代の反映だ。しかし実情は、認知症にかかる可能性は減っている。こんにち、米国で65歳以上の高齢層が認知症にかかる可能性は、1970年代の同年齢層よりも44%低い。こうした変化を反映すると、2050年の予想認知症患者数は現在の2倍ではなく、1.4倍の増加にとどまる。
医学の進歩にもかかわらず、認知症の克服はまだ遥か先のことだ。ただ、高学歴・高所得層や先進国の国民ほど相対的に認知症にかかりにくいという事実が、数々の研究で提起されている。研究者たちは、喫煙や過食を避け、コツコツと運動をし、学びを継続するよう勧めている。やるべきことの計画を立てて暮らす高齢者は、無為に時間を過ごす高齢者よりも認知機能が30%高いという統計もある。明日の希望を抱き、今日を一生懸命生きることは、望ましい生き方の姿勢であるだけでなく、自分自身で実践できる最善の認知症予防法というわけだ。