恐怖の株式市場、「公共の敵」は韓国政府【コラム】

 ちょうど2カ月前、若いワーキングマザーたちとの昼食の場で聞いた話だ。「子育て関連コミュニティー・サイトに株式投資の収益を自慢する投稿が掲載されると株式市場は最高値になるというが、そうした『収益アピール』が増えたため、株を保有する立場からすると不安だ」という内容だった。当時、韓国総合株価指数(KOSPI、コスピ)は7800を超えたところだった。しかし、その後1カ月間で16%以上も上昇して9000を突破したかと思うと、わずか半月で20%以上下落するなど、「ローラーコースター」ならぬ「ローラーKOSPI」現象が発生した。

【図】初のKOSPI7000超え 騰落銘柄数の内訳

 恐怖と不安が経済全般に広がっている。以前は「自分だけが上昇相場の恩恵から取り残されているのではないか」という個人的なFOMO(取り残されることへの恐怖)だったが、今や「下落相場が始まったのではないか」という集団的な恐怖へと変貌した。半年前と比較すると、KOSPIは60%以上上昇しているため、世界的に見ても驚異的な成績であることは事実だ。しかし、政府と与党が国民年金や退職年金まで総動員して株式市場を浮揚させた結果、市場に深く関わる国民があまりにも増えすぎてしまった。ここで下落相場を阻止できなければ、現政権が非難を浴びるだけで済む問題ではなくなる。政府は恐怖の発生源を特定し、下振れリスクをコントロールしなければならない。

 恐怖の核心は、メモリ半導体産業、特にサムスン電子とSKハイニックスという2大企業の株価牽引(けんいん)が圧倒的だったという点にある。メモリ半導体の需要見通しに関する否定的なニュースがわずかに出ただけでも世界の半導体企業の株価は一斉に揺れ動くが、「サム電ニックス(サムスン電子+ハイニックス)」への依存度が過度に高いKOSPIの変動性は、もはや許容しがたいレベルに達している。それでも先週、SKハイニックスが米ナスダックへの米国預託証券(ADR)上場を成功させ、両社の収益に対する時価総額が米国のライバル企業であるマイクロンに比べて依然として著しく低いという事実は、拙速な失望を警戒させる。

 真の問題点は「金の卵を産むガチョウ」の腹を裂くようなこれまでの振る舞いだ。両企業の成果に頼る政府の各種政策推進は、企業は株主のものであるという大前提を揺るがすほどになっている。湖南半導体クラスター計画が発表された日、大統領がサムスンとSKの会長に対して90度に腰を曲げてお辞儀をした場面は、その計画が誰に大きな利益をもたらすかを極めて明確に示していた。しかし、一回のお辞儀だけでサムスン電子やハイニックスの株主の同意を得ることはできないという点は、一連の商法改正を強行した大統領と与党が一番よく分かっているはずだ。個人株主まで説得できる真摯(しんし)な方策を、政府が自ら提示すべきだった。

 さらに衝撃的なのは、「超過利潤」を社会的に分配すべきだという雇用労働部(省に相当)長官の主張である。「超過利潤」で基金を設立し、賃金が低い分野に対しても支給額を引き上げられるようにする、韓国型の「社会連帯賃金」を模索しようというのだ。進歩(革新)系の市民団体は、そのように造成される基金の運営に労働界や市民団体も参加すべきだとしており、早くもその恩恵にあずかろうとしている。今日(14日)開催される雇用労働部の「人工知能(AI)技術革新に合わせた新たな社会革新の道」討論会は、5月末に提案された「韓国型社会連帯賃金政策の可能性模索に関する緊急討論会」がやや表現を和らげたものだ。討論会の結論も、穏当なものになることを願うばかりだ。

 政府が企業への介入に躊躇(ちゅうちょ)しないことこそが、恐怖の根本的な要因だ。先週、関税庁長は輸出代金を迅速に国内に移さない複数の企業に対し、企画捜査を実施すると発表した。為替レートでのウォン安を予想して輸出代金を海外に留め置き、「不当な為替差益」を狙うべきではない、ということだ。しかし、「超過利潤」と同様に「不当な為替差益」という言葉を正当化するには、「予想された利潤」や「正当な為替差益」の基準が明確でなければならない。だが、理論的にも実務的にも、そのような基準はどこにも存在しない。基準がなければ、判断は恣意(しい)的にならざるを得ない。こうした恣意性は国の品格に見合っているだろうか。外国人投資家たちの目にはどう映るだろうか。

 さらにその根底にある不安は、マクロ経済的な環境に起因する。過去の金融危機は大抵の場合、債務が累積しているのに金利が急激に引き上げられた時に発生した。現在、米国や欧州の先進国が抱える政府債務の規模は、わずかな衝撃でも国債金利が急騰するほど大きく、イラン情勢に端を発する物価上昇により、米国の基準金利引き上げに皆が神経を尖らせている。このような状況下で、韓国政府が支出拡大に積極的であるため、不安はさらに高まらざるを得ない。しかも、米国に対する投資の約束がいまだに履行されていないのに、半導体による成果を国内で分かち合うことばかりに躍起になっていれば、余計な注意を喚起させるだけではないだろうか。

 恐怖を抑えるために政府が成すべきことは極めて明確だ。半導体の成果に便乗するのをやめ、今からでも実用的で企業にやさしいビジネス環境を構築すべきである。労働組合に任せきりになっているような労働政策も、現在の状況から脱却し、AIイノベーションと調和する経済政策へと転換しなければならない。なすべきことさえすれば、仮に成果がなかったとしても、免責はされるだろう。

ミン・セジン東国大学経済学科教授
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  • ▲取引時間中にKOSPIが7000を切った13日午後、ソウル市中区のハナ銀行ディーリングルームに表示されたKOSPI指数。/写真=パク・ソンウォン記者

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