ヘルメットをかぶり、配達ボックスを載せた男がバイクを止める。30秒の短い信号待ちの時間、くしゃくしゃになったレシートを取り出して何かを書き込む。ニックネームは「外売詩人(ワイマイ詩人)」、出前配達をする詩人という意味だ。中国江蘇省の農村出身の配達ライダー、王計兵(ワン・ジービン、56歳)。中卒の学歴で、これまで廃品回収や出前配達をして、体を張って生計を立ててきた。つらい肉体労働だが、暇さえあれば詩を書いた。
【写真】配達員として5年間で約3億ウォンを稼ぎ、2億ウォン以上を貯金した中国人男性(25)
1日14時間道路を走るという彼が、中国の「魯迅文学賞」の詩部門受賞者に決まった。四年に一度授与されるこの賞は、現代中国文学の父・魯迅を称える中国最高の権威ある文学賞だ。ノーベル文学賞受賞者の莫言(モー・イエン)、『許三観売血記』(邦題『血を売る男』)の余華(ユイ・ホア)もこの賞を受賞して中国全土に名を馳せた。今回の受賞作は詩集『低処飛行』。数百人のライダーや清掃員、建設現場の労働者にインタビューし、働く人々の喜怒哀楽を詩に込めた。詩集のタイトルは「翼を広げたからといって必ずしも高く飛ぶとは限らない。低く飛ぶことも飛ぶといえる」という意味だという。
彼の作品は、労働文学や闘争文学とは趣が異なる。1980年代に韓国の朴労海(パク・ノヘ)が『労働の夜明け』を通じて文学を体制抵抗の道具にしたとすれば、王計兵の文学には大げさなスローガンがない。アルゴリズムの催促や誤配達による悔しさの中でも、人間としての自尊心と叙情を守ることに集中している。客が住所を間違えて無駄足を運んだにもかかわらず、逆に暴言を吐かれた日、怒りの代わりに書き下ろした詩「時間を追う人(趕時間的人)」は、大陸の数千万人の読者に深い感動を与えたという。
文学が象牙の塔や個人の内面から抜け出し、現場の土埃とともに率直になった事例は、世界文学史において珍しいことではない。村田沙耶香は、18年間コンビニのアルバイトとして働いた経験をもとに小説『コンビニ人間』を書き、芥川賞を受賞した。米デトロイトの自動車工場の労働者だったフィリップ・レヴィンも、職場の油の匂いや疲労感を詩に表現してピュリッツァー賞を受賞した。
私たちはしばしば、高く飛ぶ成功ばかりを称賛する。スポットライトが降り注ぐ中でも、王計兵は「60歳まで配達のバイクから降りない」と宣言した。生活の現場を離れた瞬間、文学の血も冷めるという事実を知っているからだろうか。彼は交差点の信号待ちの停止線、エレベーターのドアの前、そして次の呼び出しを待つたびに思い浮かんだ文章を、レシートやタバコの箱に書き留めるという。手で書けない時は携帯電話の音声メッセージに残す。高尚な想像力ではなく、正直な労働に根ざした汗の文学と言えるだろう。