李在明(イ・ジェミョン)大統領が通商の司令塔である呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長を職権免職という形で更迭した。呂前本部長は更迭前日の13日も経済関係閣僚会議に出席するなど、通常通り業務を遂行していた。公務員の身分を剥奪する職権免職は、政務職の人事において異例の措置だ。しかし、青瓦台(韓国大統領府)も産業通商部(省)も免職の理由については口を閉ざしている。更迭の事実が伝えられたのも政府の公式発表ではなく、報道を通じてであった。
通商本部長の更迭は、米国の通商法第301条に基づく調査やeコマース企業「Coupang(クーパン)」問題など、デリケートな通商懸案が山積している局面で行われたため、その背景に関心が寄せられざるを得ない。「米政府が最近、対米投資プロジェクトの推進を急ぐよう韓国政府への圧力を高めている状況と関連があるのではないか」という解釈も出ている。しかし、産業通商部は「政務的判断の領域」として口を閉ざしている。国益を懸けて外国と交渉する司令官を交代させておきながら、説明が一言もないとは、あきれるばかりだ。下手をすれば米国側に誤解されかねない事態である。本人は否定しているが、政府とその周辺からは「個人的な理由によるものだ」という話も漏れ伝わっている。
現政権になって以降、こうした事態は一度や二度ではない。今年5月に保健福祉部第1次官が突然更迭された際も、青瓦台と同部は説明を一切しなかった。ありとあらゆる憶測が飛び交ったが、今なお人事異動の背景はベールに包まれたままだ。昨年末、農林畜産食品次官が任命からわずか5か月で突然退任した際も、6月に消防庁長が就任から90日で退任した際も同じだった。先週、青瓦台の春秋館長(プレスセンター長)も辞表を提出したが、納得のいく説明はなかった。理由も説明もない「突然の更迭」が一つのパターンとして定着してしまっている。
信賞必罰は公職人事の基本である。背景を事細かに明かすことはできなくとも、更迭人事を行う場合は、少なくともその理由を推し量れなければ、公正な人事であるかどうか判断ができないだろう。現在のような事態が繰り返されれば、公職社会に漠然とした恐怖が広がり、不必要な憶測ばかりが飛び交うことになる。国民に対する礼儀もない。
このように高官を突然辞めさせているのに、レバレッジ型ETFの導入を主導するなど、更迭の理由が複数ある金容範(キム・ヨンボム)青瓦台政策室長などはそのまま居座らせている。「この政権の人事基準と原則は一体何なのか」という疑問が生じざるを得ない。