「何? この低クオリティ…」バカにされていた中国低予算アニメがまさかの大ヒット…社名に「牛」の字が付く株も急騰

 雑な絵でバカにされていた中国の低予算アニメーション映画が予想外の大ヒットとなり、ブームを巻き起こしている。人工知能(AI)による整ったコンテンツが溢れる時代だが、やぼったい作品の方にリアリティーが感じられるというのだ。この映画が「ネットミーム」として広まり、タイトルにちなんで社名に「牛」の字が入っている企業の株価も上がっている。

【写真】中国アニメ『牛来』のスタッフが自ら描いたポスターとネットミーム

 話題の作品は、今月5日に中国で公開された86分間のアニメ映画『牛来(ニウ・ライ)』だ。生まれたばかりの子牛「牛来」が冒険に出て、友情や信頼、責任や犠牲などを学んでいくというストーリーで、最後はこのすべての冒険が牛来の夢だったという「夢落ち」で終わる。造園学を専攻した信雨萌監督(34)が国営企業に勤める母親・孫麗芳さん(60)と一緒に5年前から制作した。2人ともアニメ制作の経験はなく、作画や脚本、声優の演技などを独学し、母親は脚本とエンディング・テーマも自ら手掛けた。

 公開当初は、雑な絵とキャラクターのつたない動きに対して「こんな映画が何で映画館で上映されているんだ?」とバカにする声が殺到した。「マネーロンダリング(資金洗浄)や政府の補助金を狙った映画ではないか」という疑惑までささやかれた。しかし、奇妙キテレツで雑な子牛のキャラクターが交流サイト(SNS)でネットミームとして広まったことで状況は一変した。「どれほど酷い出来なのか直接見てみよう」と映画館に行く人が増え、母子が5年間独学で映画を完成させたという背景も明らかになるや、「AI時代には珍しいリアリティーが感じられる」という声も上がっている。

 興行成績も大逆転した。公開から10日間の興行収入は7000元(約17万円)にとどまったが、今月18日時点で通算興行収入は2000万元(約4億7300万元)を突破した。中国の映画前売りプラットフォーム「猫眼(マオイエン)」は最終興行収入が1億3500万元(約32億円)に達すると予測している。「内巻(ネイジュアン、過度な競争)」に疲れた中国の若者たちが、わざわざダサくて雑な作品を探し求めて楽しむ、いわゆる「審丑(シェンチョウ、醜くて奇異なものを楽しむ)」現象とマッチしたという分析もある。

 ブルームバーグは19日、「この映画の大ヒットは中国株式市場にまで広がっている」と報じた。映画タイトルの『牛来』は「牛が来る」という意味にもなることから、一部の個人投資家たちはこれを「ブル・マーケット(強気相場、ブル=雄牛)」のシグナルのように受け止めているという。映画に登場するヒョウ「豹拉(バオラ)」の名前も、株価が急騰するという意味の中国語の表現と発音が似ており、株式市場のネットミームとして広まった。事実、社名に「牛」という字が入っている「河北金牛化工」の株価は今週、一時21%に、「羅牛山」の株価も一時26%急騰した。

 さらに先月、モメンタム株(材料株)の急落で大きな損失を被った中国の個人投資家の間で、『牛来』は一種の「ブラック・コメディ」のように消費されている。捕食者を避けて荒涼とした大地をさまよう子牛の苦難を、自分たちの投資経験に例えているのだ。AIを利用し、映画のワンシーンに中国株式市場の状況を例えたセリフを被せたパロディ動画やネットミームも多数ある。

 低予算で制作され、正式なポスターすら作られていなかったため、一部の映画館ではスタッフが手描きでポスターを描いていることも、観客の注目を集めている。中国の交流サイト(SNS)「小紅書(RED)」では、現代美術の従来の手法を打ち破ったフランスのアーティスト、マルセル・デュシャンに例え、「粗悪さは妥協ではなく、主流の美学に背いた『デュシャンの瞬間』だ」という評価まで出た。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は「AIで誰でも『もっともらしいコンテンツ』を作り出せる時代に、逆説的なことに『人が不器用にも自分で作った痕跡』がヒットの要素になった」と分析している。

チェ・ハヨン記者
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  • ▲映画『牛来』のワンシーン。写真=中国の交流サイト(SNS)「微博(ウェイボー)」より
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