北朝鮮工作員から仮想資産60万ドル相当(現在のレートで約9400万円。以下同じ)相当を受け取り、脱北者や韓国軍の現役軍人に関する情報を収集したイ被告(43)が、最近ソウル中央地裁刑事21部(裁判長:趙淳杓〈チョ・スンピョ〉部長判事)で懲役5年、資格停止5年を言い渡されたことが6日に確認された。イ被告は、北朝鮮の偵察総局所属の工作員Aの指令を受け、国家機密および軍事上機密を探知・収集した疑い(国家保安法上の間諜・会合・通信などの罪)で起訴された。検察は、北朝鮮がハッキングを通じて強奪した仮想資産を対南工作資金として活用したとみている。
【グラフ】5年間(20年〜24年)のスパイ・安保関連犯罪の検挙状況
イ被告は2021年、京畿道河南市で仮想資産投資会社を運営していたところ、同年2月にAから会社運営資金の名目で米貨60万ドル相当の暗号資産を受け取った。イ被告は同年9月には、Aから投資収益金30万ドル(約4700万円)のうち27万ドル(約4200万円)を自分の取り分として受け取った。
イ被告は2016年、暗号資産取引のインターネットコミュニティでAを初めて知ったという。その後、Aと連絡を取り続け、2018年にAが運営する違法賭博サイトでスパムメッセージを送り顧客を引き込む仕事をしていたことが調査で分かった。このころ、イ被告はAから韓国軍現役将校の人的事項を調べてほしいという頼みを初めて受けた。その後21年には、Aが統一部(省に相当)職員の名簿を読み上げながら「知っている人はいるか」と尋ねたこともあったという。そしてAはイ被告に対し、反北朝鮮活動を行う脱北者に接触してみるよう指令を下した。
これを受けてイ被告は21年5月、ある脱北者団体代表に「毎月100万ウォン(約12万円)程度支援する」と称して接近した。脱北者団体代表が暗号資産ウォレットを作成すると、イ被告はウォレットアドレスをAに渡し、Aは100万ウォン相当の暗号資産を団体代表に送った。その後、イ被告はこの団体から対北ビラ散布行事の写真や動画も受け取った。イ被告は、別の脱北者ユーチューバーにも「支援する」と称して面会を提案し、彼らの連絡先や写真、活動情報を収集したことが調査で判明した。
同年7月、イ被告はAから韓国軍の現役将校7人の名前、所属部隊、住民登録番号、住所、家族関係などを含むファイルを受け取り、「追加情報を確認して懐柔せよ」という指令を受けた。これを受けてイ被告は、B大尉のソーシャルメディアから顔や制服の写真を確保した後、興信所に「娘が付き合っている人」だとして裏調査を依頼した。イ被告はAを通じて興信所にビットコイン250万ウォン相当(約29万円)を渡し、B大尉の所属部隊や官舎、居住部屋、日程などを確保した。また別の大尉C氏にも接近し、「軍組織図などの情報をくれるなら最大100万ドル(約1億6000万円)まで提供できる」と提案したが、C大尉の拒絶により不発に終わった。
イ被告は21年6月から翌年4月までの約10カ月間、Aと30回あまりも連絡を取り合い、現役将校らについての情報収集と懐柔方法を話し合った。イ被告は、韓国軍合同指揮統制システム(KJCCS)のハッキングに必要な時計型隠しカメラの購入、ハッキング装備製作のための部品調達状況などもAに報告した。
裁判所は、仮想資産取引の分析や海外捜査資料などを基に、Aがイ被告に渡した仮想資産は北朝鮮が統制・運用する資金と繋がっていると判断した。追跡が難しい仮想資産が対南工作資金として使われた可能性が高いという趣旨だ。
これに先立ちイ被告は、Aの指令により韓国軍将校に接近して軍事機密の探知を試みた疑いなどで別途起訴され、昨年11月に懲役4年の刑と資格停止4年が確定している。