2023年10月7日にイスラエルとガザ地区の境界を越え、無差別テロを行ったハマス戦闘員らに対し「私を殺さないで」と叫んだイスラエル人女性を拉致したハマスの戦闘員が、26日にイスラエル軍の精密空爆で殺害された、とエルサレム・ポストなどイスラエルのメディアが27日報じた。
【動画】ハマス戦闘員サヘル・ニダル・ラトフィ・サクルを空爆で殺害される様子
イスラエル国防軍(IDF)と国内を担当する情報機関シンベトは、パレスチナ・ガザ地区中部ヌセイラトへの空爆で、テロ当時、境界付近のノヴァ音楽祭会場からイスラエル人のノア・アルガマニさん(当時25歳)をバイクで連行したハマス戦闘員サヘル・ニダル・ラトフィ・サクルを殺害したと発表した。イスラエル警察は、サクルが道を歩いている最中に空爆で殺害される様子を収めた映像も公開した。
イスラエル情報当局はまた、10月22日にガザ地区北部への別の空爆で、ハマス軍事組織の司令官ムハンマド・ハマド・ムハンマド・ガバインも殺害したと明らかにした。
連れ去られた当時、アルガマニさんは交際相手と数時間隠れていたが、テロ犯らに見つかった。バイクの後部座席に乗せられたアルガマニさんは、後ろで別々に連行されていた交際相手に手を伸ばしながら「わたしを殺さないで(Don’t kill me)」と叫んだ。ハマス戦闘員らが撮影したこの映像は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて世界中に拡散した。
警察が公開したサクル殺害の空爆映像を見ると、ドローンとみられる飛行物体が標的をしばらく追跡した後、精密に攻撃し、煙が上がる。間もなく人々が集まり、サクルの遺体に布をかける。
殺害されたハマス戦闘員のサクルは当時、バイクを運転していた。イスラエル軍当局は、サクルがガザ地区で活動するグローバル・ジハード系組織とつながっていたと主張している。イスラエル軍によると、サクルはイスラエルとの戦争期間中、ハマスに武器を供給し、イスラエル軍と民間人を狙った新たな攻撃の計画にも関与していたという。
アルガマニさんは身柄を拘束されてから245日後の翌年6月8日、イスラエル特殊部隊の「アルノン作戦」により、ほかの人質3人とともにガザ地区から救出された。当時、ハマス戦闘員らとの激しい交戦があり、ハマスが支配するガザ地区の保健当局は、この作戦でパレスチナ人274人が死亡したと発表した。この数字はテロ犯と民間人を区別していない。
◇アルガマニさん、各国を回り凄惨な体験を証言
アルガマニさんは救出後、東京で主要7カ国(G7)の駐日大使と面会したほか、国連安全保障理事会で証言(2025年2月)したり、米国5都市の主要大学で講演しながら、245日間にわたる拘束期間に経験した凄惨な状況について証言した。
アルガマニさんは「毎晩眠りにつくたび、人生最後の夜になるかもしれないと思った」「完全な恐怖と悪夢のような生活だった」「この瞬間にも人質たちは地獄で生きている」と語った。一緒にいた幼い人質たちが先に解放されたときの心境については「決して言葉では表現できない」とし、人質交渉は全面的に実施されるべきだと主張した。今でも当時の写真を見るのはとてもつらいと打ち明けた。
◇イスラエル軍、大規模な追跡専門部隊「ニリ」運用
現在、ガザ地区は昨年10月から技術的には停戦状態にあるが、ハマスの戦闘員らを標的にしたイスラエル軍による空爆は続いている。
イスラエル軍とシンベトは今年8月、テロ当時の拉致と身柄拘束に加担した者たちを追跡し続ける「ニリ」という名の特殊部隊を別途運用していることを、初めて公式に認めた。ニリという名称は、「イスラエルの永遠なる者は偽らない」というヘブライ語聖書の一節(サムエル記上第15章29節)に由来する。
イスラエル軍は、2023年10月7日の侵入・虐殺、人質拘束に加担したおよそ5000人のうち、これまでに2800人が死亡し、このうち1500人以上はガザでのニリ作戦と追跡により排除されたと発表した。また、およそ300人の容疑者がイスラエルで逮捕されている。
今年8月、チャンネル12のニュースのインタビューで、任務を初めて明らかにしたニリ部隊の将校たちは、それぞれの標的を確認して所在を突き止めるため、「果てしない資料の山」を一つずつ集めて分析し、数千人の名前が記載されたスプレッドシートを作成したと打ち明けた。ニリは、テロ犯らが撮影した動画や写真、顔認識ソフトウエア、人工知能(AI)、尋問、情報提供者、拘束されたテロ犯らを活用した。
同部隊は、顔認識に特化したツールを開発し、人工知能を用いて「全体像を完成させた」と説明した。拘束期間中に人質を虐待した人物、人質交換に伴う解放の場に参加したテロ犯らも、すべてこの排除リストに記載された。
2023年10月7日、ハマスのテロ犯たちとほかのイスラム過激派テロ組織のメンバーたちは、イスラエルの国境を突破して侵入し、およそ1200人を殺害し、250人以上を人質として連行した。その後、イスラエルが本格的なハマス掃討作戦を展開し、ガザ地区では7万4000人以上(ハマス保健当局集計)が死亡した。