北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党総務部長が、非武装地帯(DMZ)で発生した爆発事故の原因は北朝鮮軍の地雷である可能性が極めて高いとする韓国軍の発表を全面的に否定し、国境線で実弾射撃を行えば容赦なく報復すると威嚇した。これに先立ち韓国軍合同参謀本部は、9月21日にDMZで発生した爆発事故の原因について、北朝鮮軍の地雷である可能性が極めて高いとの中間調査結果を9月28日に発表した。韓国軍は、北朝鮮が埋設した地雷と最終的に判断されれば「相応の措置」を取るとしている。
朝鮮中央通信が9月30日に報じたところによると、金与正氏は29日、「挑発の張本人たちは自作茶番劇の代償を覚悟すべき」と題する談話を発表したという。
金与正氏は談話で「今回の事件は、挑発の時期と手法において、10年ほど前に世間を騒がせた『木箱地雷事件』を思わせる明白な自作自演だ」と主張した。
2015年の木箱地雷事件とは、北朝鮮軍が軍事境界線(MDL)の南側に越境して埋設したと推定される地雷の爆発事故で、韓国軍の下士官が重傷を負った出来事を指す。当時、韓国軍はこれに対する相応の措置として、対北朝鮮拡声器放送を実施した。
金与正氏は「看過できないのは、今回も武装した韓国のごろつきどもが根拠のない結果を捏造(ねつぞう)し、『妥当で相応の措置の実施』を公然と口にしながら、われわれに対する政治・軍事的挑発を『正当化する名分』をつくり出しているという事実だ」と述べた。その上で「どこかも分からない場所で、出どころも分からない地雷を踏んで爆発させておきながら、むやみに誰かを疑い、停戦協定違反が明白だなどとわめく見苦しい醜態を、ただ座って見物しているわけにいかないのではないか」と主張した。
対北朝鮮拡声器の稼働を再開すべきだという主張が韓国で出ていることについて、金与正氏は「事件の責任をまず他人になすり付け、それを証明するための『物的証拠』をでっち上げようとする韓国の連中の振る舞いこそ、荒唐無稽で言語道断の極みだ」と述べた。
金与正氏は、国境線一帯で行っている要塞化作業について「いかなる軍事的目的とも無関係の、徹底した主権行使に過ぎない」とし、むしろ韓国軍が北朝鮮軍の越境を主張し、言いがかりをつけて警告放送や射撃で身の安全を脅かしていると主張した。さらに「情勢悪化の責任をわれわれに転嫁しようとする意図的かつ計画的なこじつけによる主張だ」とした上で「わが軍人はただの一度も国境線を越えたことがない」と述べた。
金与正氏は「銃弾が一発でもわが領土に着弾した場合、多くのことを覚悟しなければならない」とした上で「韓国軍のごろつきどもが、わが軍人に向けて警告射撃ではなく実弾射撃を行うなら、わが国境部隊は直ちに容赦ない報復を加える」と主張した。さらに「それに対する行動指針は、国境線防御区分隊に下達済みだ」とし、韓国軍第3軍団第21歩兵師団の非武装地帯方面に戦術的反撃手段を増強する措置を取ることにしたと述べた。
この日の金与正氏の談話は、北朝鮮住民が接することのできる労働新聞や朝鮮中央放送など、対内向けメディアでは報じられていない。