今年の初めに韓国の朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長がスリランカを訪問した際、首都近郊のコロンボ空港では現職の閣僚4人が待機していたという。午前0時を過ぎた深夜にわざわざ出迎えに来たのだ。「相手をもてなす」という国としての強い意思があればここまでやるものだ。
今月4日に米国連邦議会のナンシー・ペロシ議長が来韓した際、韓国側から誰も出迎えなかったことが問題になると、韓国外交部(省に相当)は「立法府..
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今年の初めに韓国の朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長がスリランカを訪問した際、首都近郊のコロンボ空港では現職の閣僚4人が待機していたという。午前0時を過ぎた深夜にわざわざ出迎えに来たのだ。「相手をもてなす」という国としての強い意思があればここまでやるものだ。
今月4日に米国連邦議会のナンシー・ペロシ議長が来韓した際、韓国側から誰も出迎えなかったことが問題になると、韓国外交部(省に相当)は「立法府の外賓を迎える際には国会が対応する。行政府は関係がない」と説明した。この言葉は官僚主義的な責任逃れにしか聞こえない。儀典の指針は「従わなければ大変なことになる」といった絶対的な法則ではない。状況によって必要であれば柔軟性を持って対応できるものだ。ペロシ議長到着の際に台湾は外交部(省に相当)長官、日本は外務次官らが空港で出迎えた。台湾も日本も儀典について知らないからこんな対応をしたのではない。
【フォト】2015年9月3日、天安門の城楼で中国人民解放軍の軍事パレードを参観した朴槿恵大統領
韓国の国会と大統領室は「米国側が空港での出迎えを遠慮した」「事前に了解を取り付けた」とも主張した。米国が韓国に対しては「出迎えは必要ない」といい、日本と台湾には「出迎えてほしい」と言うのはあり得ない。ところが韓国だけが誰も出迎えなかった。ある現職の官僚幹部は「プレゼントをもらう側が『そこまでしてもらうのは申し訳ない』と言ったので、韓国だけが『そうですか。ならあげません』と言ったような状況だ」と例えながら説明した。
「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はペロシ議長と会談しない」という決定についてはもう少し詳しく振り返る必要がある。尹大統領は先日、来韓した米国のシンクタンク関係者に会おうとしたという。この人物は大統領がわざわざ会うような「大物」ではなかった。最終的にスケジュール調整がつかず会えなかったようだが、「プラスにさえなれば格は関係ない」と普段から語る尹大統領のスタイルを示すエピソードだ。尹大統領は就任前も次官級のソン・キム米国対北特使と食事するなど異例のもてなしをしている。
そのため「休暇」とはいえソウルにいた尹大統領が、米国の外交政策に大きな影響力を持つペロシ議長を「パッシング」したのはどうしても際立ってしまう。「韓米同盟の復元」や「自由民主主義」を訴えてきた尹大統領がペロシ議長に会うのは何らおかしなことではない。ペロシ議長は欧州やアジアを訪問する際には必ずその国の首脳と会談してきたため、負担も小さかったはずだ。そのためこの件については様々な見方があるが、ある外交筋は「バイデン大統領もペロシ議長の台湾訪問を良く思っていないというニュースが報じられたので、尹大統領とスタッフたちが最初の判断を間違えたようだ」と指摘している。
実際の事情がどうあれ、一度「休暇が理由」と発表したのであれば、それに応じた対応をすべきだったがそれもできなかった。ペロシ議長来韓前後の大統領室からのメッセージは「世論を考慮していったんは会うことを考えたが、それも見た目が良くないので電話会談でうまくおさめようとした」と解釈されるしかなかった。その後、大統領室はペロシ議長と会談しなかったことについて「国益を総体的に考慮した結果」と説明を変えたが、これは惨事レベルの失言だった。「休暇」という最初の理由とつじつまが合わないのはもちろん、戦略的に何か大きな考慮が行われたのであれば、「中国への配慮」以外にその理由が見当たらないからだ。大統領室は「中国に配慮したのではない」と後から弁解したが、今回の大統領室の対応を見て、誰もがかつて朴槿恵(パク・クンヘ)元大統領が自由主義陣営の首脳で唯一天安門の城楼に上ったことを思い起こしたはずだ。
もちろん韓米関係はこの程度の事件で揺らぐほどぜい弱ではないが、大統領の支持率低下も相まって必要以上に話題になった側面もあるだろう。ただし「外交非礼」とか「儀典上の問題」とか言ったゴシップめいた議論のレベルを超え、今回の件は「韓国の外交・安全保障のシステムはしっかりと機能しているのか」という懸念を呼び起こした。「コントロール・タワーが確固たる中心となり、これに従って現場の組織は一心不乱に動いているのか」「同盟国との意思疎通に問題はないのか」、さらには「韓国の外交に明確な方向性や原則はあるのか」などの懸念だ。ペロシ議長が韓国を後にした直後、中国は「礼儀正しい決定」と評価し、米国では官民双方からあまり良くない反応が相次いだ。これは本来意図した結果ではなかったはずだ。
イム・ミンヒョク記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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