金総書記死去:前途多難の金正恩体制

張成沢氏の役割に注目

■張成沢氏、背後で実権か

 こうした中、多くの専門家は金正日総書記の義弟に当たる張成沢(チャン・ソンテク)氏の役割に注目している。張氏は金正日総書記の健康問題が浮上して以降、非常事態を収集する上で中心的な役割を果たしてきた。2004年に粛清された張氏の側近は、昨年の党代表者会で続々と復帰を果たしている。

 張氏はまた、国防委員会副委員長と党行政部長を兼任し、公安機関、司法機関を統括しているため、権力層内部での支持勢力拡大と反対派に対する監視を行う上で有利な地位にある。人民軍次帥だった兄、張成禹(チャン・ソンウ)氏のおかげで軍の実力者とも親交が深い。韓国政府筋は「張氏を金正恩氏の後見人と見なす見解が多いが、(朝鮮王朝には)端宗(タンジョン)を追い出した首陽大君(スヤンデグン)の例もある」と話した。(編注:端宗は1452年に11歳で即位したが、1455年に叔父の首陽大君に王位を奪われた)

 治安政策研究所のユ・ドンリョル先任研究員は「今後3年がヤマだ」と指摘した。儒教の伝統を重んじる北朝鮮では、金正日総書記に対する3年の服喪期間(三年喪)にクーデターなどで権力を奪取すれば、その正当性に問題が生じるとの指摘だ。金正日総書記も、金日成主席の死去から3年間は、「遺訓統治」(金日成主席の指導力をそのまま生かす統治手法)を行った。

 北朝鮮事情に詳しい消息筋は「当面は『ロイヤルファミリー』と軍部を中心に体制が維持されるだろうが、経済難が続き、金正恩氏がリーダーシップを発揮できない場合、何が起きるか分からない」と述べた。特に、金正日総書記の健康不安が表面化して以降、影響力を拡大してきた軍部の動きが「金王朝」の運命を左右するとの見方が有力だ。

 幹部出身の脱北者は「金正恩氏に近い新軍部勢力が台頭する状況で、金正日総書記が突然死去した。そのため、従来の軍部勢力と新軍部勢力の間で摩擦が起きる可能性も否定できない」と分析した。

 このほか、北朝鮮の指導部はいずれも「特殊利益」を共有しているため、金正恩氏をサポートし、これまでの体制を維持することが最善と考えるのではないかとの見方もある。

北京= アン・ヨンヒョン記者
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