救急車はタクシー代わり? 利用患者の88%は軽症

救急隊員、重度の患者に手が回らず

 先月25日午後6時半ごろ、京畿道水原市にある亜洲大学病院の救命救急センターに救急車が駆け付けた。竜仁消防署に所属する救急車だった。患者は50代の女性で、軽い目まいを訴えていた。血圧や脈拍、呼吸などは全て正常で、神経学的な異常も見られなかったため、軽度な患者と分類された。それでも、この患者を救急車で移送するために、3人の救急隊員が同乗し、30分以上もかけてやって来た。患者は救命救急センターで簡単な治療を受けた後、薬をもらって帰宅した。

■軽症の患者、救急車をタクシーのように利用

 亜洲大学病院は、京幾道南部地域の重度の患者を受け入れる、地域の救命救急センターだ。取材陣は、ここ1カ月の間に救急車で同病院に運ばれた患者たちの症状の重さを医療陣と共に分析した。

 計883件の搬送のうち、多発性外傷、脳卒中、心筋梗塞など重度の患者は109件と、全移送のわずか12%にすぎなかった。救急車に乗ってきた軽度の患者の中には、「唇が渇いた」「鼻血が出た」「頭を洗っていたら首からグキッという音がして首が動かなくなった」「耳かきで耳を突いてしまって血が出た」「1センチほどの切り傷が生じた」「腹筋運動をしていたら股関節が痛くなった」「チャンポンを食べたら歯が折れた」「魚の骨が喉に引っ掛かった」「酒に酔って殴られて歯がグラグラする」「薬がなくなった」などというケースもあった。こうした患者を搬送している間に重度の患者からの連絡が入れば、搬送や応急処置が遅れてしまいかねない。

 救急車が出動する場合には、少なくとも2人の救急隊員が同乗する。車両の運営費、医療装備費、救急隊員の人件費などを考慮すると、救急車1台が出動するたびに約29万ウォン(約2万4000円)が掛かる(2008年、保健福祉部〈省に相当〉の研究調査)。現在の物価水準では、40万ウォン(約3万3000円)を超えるだろう。しかし、救急車をまるでタクシーのように利用する状況は、全国どこでも変わらない。昨年12月の1カ月間にソウル大学病院の救命救急センターに救急車で搬送された患者の3人に2人(66%)は、簡単な治療を受けただけで帰宅した。

金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者
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