「日本の歴史歪曲は東京裁判から始まった」

「日本史研究の権威」ハーバート・ビックス名誉教授インタビュー
「天皇に戦争責任がないのなら、国民も責任を負う必要はない」
日本人は誤った認識を持ち、自ら歴史を反省することが困難に
ドイツの反省も周辺国との関係から…日本はこれまで米国にしか気を使わず
日本に反省させるためには、国際的協力で圧迫すべき

 「日本の歴史歪曲(わいきょく)は根が深い。昭和天皇の戦争犯罪を断罪しなかった東京裁判がその始まりだ」

 米国における日本史研究の権威、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校のハーバート・ビックス名誉教授(76)=写真=は、本紙の電子メールによる取材に応じ、安倍晋三首相が主導する日本の歴史歪曲の根源を1946年5月から48年12月にかけて行われた東京裁判に求めた。米国が主導した東京裁判では、軍部強硬派のトップだった東条英機・元首相をはじめとするA級戦犯7人を絞首刑に処し、16人に終身刑を言い渡した。しかし昭和天皇については「戦争に直接介入した証拠がない」という理由で、起訴しなかった。

 ビックス教授は「昭和天皇は、軍部強硬派の操り人形ではなく、日中戦争や真珠湾攻撃で積極的な役割を果たし、影から操った人物だった。東京裁判の後、日本人は『天皇に戦争責任がないのなら、日本国民も責任を負う必要はない』という認識を持つようになった」と語った。

-日本は昨年、昭和天皇実録を編さんした。

「実録が編さんされた時、ある日本のメディアからコメントを求められたが、二つの理由から拒絶した。実録が、昭和天皇の誤りに関する記録を全て削除して美化のみを追求しており、またそのメディアが『批判的なコメントは載せられない』とくぎを刺してきたからだ。実録は、昭和天皇が非政治的かつ形式的な立憲君主にすぎなかったという誤った前提に立っている」

-昭和天皇も戦争犯罪に責任があるということか。

「そうだ。実録には、昭和天皇が自分の責任を認めている外国首脳との対話録が反映されていない。第2次大戦当時の昭和天皇のリーダーリップについても記述がなかった。これは、日本の歴史学界が蓄積してきた膨大な資料と矛盾する。昭和天皇は、積極的な行動派君主だった。昭和天皇は、37年に始まった日中戦争を率い、戦争の熱病にとらわれ、41年に東条英機を首相に任命して戦争内閣に直接参加した。真珠湾と東南アジアに戦線を拡大する決定も、事実上、昭和天皇が下した。昭和天皇は、敗戦が迫った時も降伏しないとこだわった。昭和天皇がもっと早く降伏していたら、広島や長崎への原爆投下は避けられた」

-東京裁判で米国が昭和天皇を起訴しなかった理由は何か。

「連合国軍総司令官だったマッカーサー元帥が、昭和天皇を積極的に保護したからだ。マッカーサーは戦後、日本を米国の統制下に置いて速やかに安定させるため、象徴的な国家指導者が必要だった。そこで免罪符を与え、この時から日本の歴史歪曲が始まった。日本の右翼は、天皇に対する批判をテロで阻んできた。60年には、皇室を侮辱した月刊誌『中央公論』の社長宅に極右勢力の人物が侵入し、家政婦を殺害した。57年には、第2次大戦に参戦した旧軍出身者が戦争の惨状について書いた本がベストセラーになったが、右翼が立ち上がり、絶版にするよう出版社を脅迫した」

羅志弘(ナ・ジホン)ニューヨーク特派員
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