中華帝国を21世紀に復活させる「中国夢」

 文化保守主義が再び台頭したのは、1990年代に「国学ブーム」が中国の知識人に広まってからだ。80年代までは中国の伝統を清算し、西洋化を通じて未来建設を進めようという全般西洋化論が圧倒的だったが、中国の知識人社会に近代のモデルとして、西洋ではなく、本土性と中華性を強調する流れが急速に広まった。

 田教授は「中国人は西洋の近代をそのまま受け入れるべきだと考えたことはなかった。西欧的な近代を吸収し、『中国的な普遍性』を再構築すべきだと主張した康有為、梁啓超以来の思想的な流れが中国の国力成長に伴う自信の回復として花開いた」と分析した。

 中国の文化保守主義は2008年、米国の金融危機、北京五輪開催が重なり、さらに強化された。儒学復興を主張する新儒家だけでなく、マルキシズムに基づく新左派、西欧式民主主義を志向する自由主義者までもが「中国らしさ」をポジティブにとらえた。その背景には企業経営すら地縁や慣習に依存する中国的な特性がある。田教授は文化大革命の失敗について、儒教が欠落した中国らしさをつくり出そうとした毛沢東の実験が中華文化の重みに圧倒されたと解釈した。

 中華帝国の遺産を新たな帝国を立てる資産として活用することを目指す中国の試みは、対外的には新天下主義論、新朝貢秩序論として表れている。中華帝国の天下主義は自らに自信がある際には寛容だが、覇権が弱まった際には、排他性が強化される。田教授は「現在の中国は成長しているので、当面は慣用的な態度を示すのではないか。ただ、中国はまだ『西欧的スタンダード』に代わる『チャイニーズ・スタンダード』をつくり出す発信力は持てずにいる」と診断した。

 中国の習近平政権が掲げる「中国夢」は、韓国の対外政策面にとっては悩ましい。韓国社会には中国肯定論と中国批判論が交錯している。田教授は「いずれも実証的ではなく、イデオロギー的であることが残念だ。長い歴史的経験に基づき展開される中国の思想的、文化的動きをもっと深く正確に理解すべきだ」と訴えた。

李先敏(イ・ソンミン)上級記者
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