【コラム】朴槿恵派の卑怯さが生んだ「怪物」チェ・スンシル

 だが、二人の関係は若干の事実に多くのうそが混じり、誇張されたものである可能性もある。筆者はこの可能性の方が高いとみている。実際、二人の関係について誤って伝わっていることが多い。代表的なのが、06年の統一地方選挙の遊説中に暴漢に切り付けられた朴氏をチェ氏が看護したという話だ。事実でないにもかかわらず、多くの人が事実と思い込んでいる。チェ氏は周囲に対し、朴大統領との間柄を誇張して話していたようだ。「大統領の演説文を手直しした」という話も、そのせいで生まれたのかもしれない。

 親朴派のある幹部は「チェ氏が朴大統領のファッションや健康などプライベートなことを助言し、手助けしている一人であることは間違いない」と話す。チェ氏は大統領が持つバッグを大統領府に差し入れたり、運動トレーナーを紹介したりして自らの影響力をそれとなく示し、多くの人が同氏に媚びへつらった。チェ氏の娘の梨花女子大学への入学をめぐる疑惑、ミル財団に関する疑惑の裏に、政界や政府、財界の要人たちが必要以上に媚びていた痕跡がみられる。

 チェ氏が正体不明の人々を連れて現れ「文化隆盛」をうんぬんしたとき、誰一人としてチェ氏の話を大統領に確認できなかったようだ。ある人は、チェ氏の話には大統領の意向が反映されているものと考え、またある人はチェ氏に言及すれば大統領の逆鱗に触れるのではないかと心配した。闇雲にチェ氏を守ったりもした。与党セヌリ党の国会議員らは先の国政監査で、野党が要求したチェ氏の証人採択を必死で食い止めた。チェ氏は死角地帯に置かれたまま「聖域」あるいは「陰の実力者」となった。大統領とチェ氏が実際にどういう間柄なのかは関係なかった。

 事ここに至っても、親朴派を自任する人々はチェ氏について朴大統領にきちんと尋ねられずにいるようだ。それでいて「私は知らない」「私は関係ない」と繰り返してばかりいる。そういう卑怯(ひきょう)な態度がチェ氏を「怪物」に育てたのだ。

李東勲(イ・ドンフン)政治部次長
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