【コラム】口パクのK-POPにガッカリ

 数年前、生まれて初めて女性アイドルグループのコンサートに行った。取材をするためだったか、中年男のファン心理からだったかは正確には覚えていない。若い男性ばかり数千人が変声期過ぎの野太い声で一斉に叫ぶ姿にはなんとなく違和感があった。とは言え、彼らも不惑を過ぎた中年男が隣にいて熱狂しているとは思わなかっただろう。

 違和感がありながらも心地よい胸のときめきに舞い上がった。ところが、そうした興奮もつかの間、あっという間に戸惑いに変わってしまった。女性アイドルグループのメンバーのうち、生歌で熱唱していたのは3人だけで、ほかのメンバーたちは事前に録音された音源に口の形を合わせる「口(くち)パク」で歌うふりをしていただけだったのだ。コンサート会場でCD音源をそのまま流せば口パクであることがばれるので、少し危なっかしそうでリアルな感じに録音した別の音源を使用していた。それに気付いてからは、どのメンバーが生歌で、どのメンバーが口パクなのか確かめようとしてしまい、頭がジンジンしてくるほどだった。結局、コンサートの後半はろくに歌を聞くこともなく急いで会場を後にした。

 韓国のアイドルグループやソロ歌手が世界で人気になる現象を「K-POP」と呼ぶようになってからかなり経つ。2012年に米ビルボード・チャート2位にまでなった男性歌手PSY(サイ)の『江南スタイル』を基点にする人もいるし、2000年に中国・北京でコンサートをした男性アイドルグループH.O.T.を出発点だとする人もいる。想像力とアイデアの競演であるエンターテインメント分野でも韓国の世界進出が可能だという事実に、胸がいっぱいになったものだ。ところが、「文化輸出商品」であるアイドル音楽には致命的弱点がある。コンサートや番組で歌を歌わずに口パクをするケースが少なくないということだ。年末年始の特別番組も「口パクの洪水」同然だった。

文化部=金性鉉(キム・ソンヒョン)次長
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