【コラム】「努力の虫」イチロー

 イチローはとにかくたくさんの努力をしてきた選手だった。機械のようにルーチンを繰り返したのもそのためだ。彼は毎日同じ時間に起き、眠り、妻が作ってくれる同じ食べ物を食べた。除湿機能付きキャリアケースにバットを入れて持ち運ぶほど野球道具の管理も徹底していた。ニューヨーク遠征時、休日でも一人、セントラルパークで空中に向かってトス練習をしている所をチームメイトに目撃されたというエピソードもある。引退直前まで同じ体重をキープ、その体脂肪率は7%台だそうだ。

 イチローは2012年のシーズン中にニューヨーク・ヤンキースに移籍して以降、「『クビになるのではないか』はいつもあった」と話す。この時、39歳だった。だから、自らに絶えずムチ打った。イチローは22日午前0時過ぎに行われた引退記者会見で、「自分の限界をちょっと超えていく。そうするといつの日かこんな自分になっている。少しずつの積み重ねでしか、自分を超えていけないと思っている。一気に高みにいるとすると、今の自分とギャップがありすぎて、それを続けられない。地道に進むしかない」と語った。

 そのイチローも歳月の流れには逆らえなかった。現役最後の舞台となった2019年大リーグ開幕2連戦で、イチローは5打数無安打に終わった。東京ドームの観客にあいさつしようと帽子を脱ぐと、髪に白い物が多く混じっていた。イチローの目には涙が浮かんでいたが、こらえている様子がありありと伝わってきた。報道陣数百人が集まった引退会見で記者が「最低50歳まで現役と公言していたが」と尋ねると、イチローは「それはかなわず、有言不実行の男になってしまったが、その表現をしてこなかったら、ここまでできなかったかなという思いもある」と答えた。多くの記者がうなずいた。真の努力の価値を知る選手の引退を惜しむものだった。

スポーツ部=イ・スンフン記者

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