【寄稿】21世紀の親中事大主義が屈辱的な理由

 にもかかわらず、政府の外交安保政策が反対の方向に向かって進んでいるのは、日本に対する憎悪と復讐(ふくしゅう)心が、中国の脅威を直視する能力をまひさせ、韓国の認識の中では、日本に対する警戒心の方が中国の現実的脅威よりも高い地位を占めているためだ。これは、日本の略奪が残したトラウマが依然として韓国の精神世界を支配している上、朝鮮王朝時代の衛正斥邪思想(朱子学を正統として守り、西欧や日本の侵略を排除しようとする思想)の残骸が反日感情をあおる作用を引き起こしているためだ。

 結局は、歴史の亡霊が脅威に対する認識を決定するようことを放置しているのであり、これを政治的に利用しようとする誘惑から、まずは捨て去らなければならない。でなければ、過去が未来への道をふさぎ、国民情緒が国益を支配するという害悪を防ぐことができず、韓国の外交安保政策を正すことはできない。

 文在寅政権の対北政策が超現実的といった批判を免れることができないのも、誤った脅威の認識に基づいているためだ。口先では非核化が重要だとしながらも、実際には非核化を阻止する政策のとりことなっている。韓国政府が平和経済という名で制裁をやめ、経済協力を再開させ、北朝鮮の経済に活気を与えるようになればなるほど、北朝鮮の核を放棄する可能性が減り、非核化を拒否するための体力を付けさせるといった単純な道理を理解できないはずがない。朝鮮半島の平和に対する脅威が北朝鮮の核武装ではなく、これを元に戻そうとする米国の「対北敵対政策」から来ているという主体思想派による脅威認識の誤りが、結局対北政策を歪曲(わいきょく)し、韓米関係を破綻に追い込む根本的な原因となっているのだ。

チョン・ヨンウ韓半島未来フォーラム理事長・元外交安保首席

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