敵基地攻撃能力保有の必要性を積極的に強調し、政策化したのは、2012年に第二次政権発足に成功した安倍晋三前首相だ。安倍氏は8年間の在任期間中、粘り強くこうした政策の必要性を主張してきた。
特に今年6月、当時の河野太郎防衛相が技術的欠陥を理由に弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」導入中断を発表した後、敵基地攻撃能力保有問題を政界の話の糸口になるようにした。安倍氏は今年9月の首相退任直前、敵基地攻撃能力保有を含む新システムに関する論議を今年末までにしてほしい、と菅政権に要請した。
だが、このような動きはすぐさま、日本国内で「専守防衛原則に反する」という批判を呼んでいる。日本国憲法第9条は国際紛争解決の手段としての戦争を放棄し、戦力を保持しない、と規定しており、攻撃された時にのみ防衛力行使が可能である「専守防衛原則」が定着している。長射程巡航ミサイル開発などの日本の最近の動きは、こうした専守防衛政策を事実上廃棄し、有事の際に先制攻撃することを意味するものだ、という指摘もある。北朝鮮の核・ミサイルなどの危機を口実に、先制攻撃できるよう安全保障政策を変えようとしているということだ。
自民党政権はもちろん、これを否定している。安倍氏は昨年、国会に提出した答弁書で、長距離巡航ミサイルについて、「専守防衛の下、国民の生命および財産と領土・領海・領空を守るために推進するもの」と反論した。しかし、日本の進歩系日刊紙「東京新聞」は「他国の領域を標的とする敵基地攻撃能力の保有は日本の安保政策の大転換と直結している」と批判した。
日本の敵基地攻撃能力保有政策は事実上、日本の再武装を促進する概念として利用される、という批判も出ている。このような動きが増えれば、遠い未来、結局は再び戦争も辞さない雰囲気を作る可能性があるということだ。
これに対して中国がすぐさま強く反発した。中国は「日本は歴史から教訓を得て、専守防衛の約束を誠実に履行し、行動で平和発展の道を歩むよう促す」と警戒感を表明した。