大法院長(最高裁判所長官に相当)は与党が政権関連の判決を下す裁判官たちを脅すために強行した「裁判官弾劾」に後輩の裁判官を犠牲にした。政権のアキレス腱(けん)とされる蔚山市長選挙工作、チョ・グク元長官による犯罪、司法壟断(ろうだん、利益を独占すること)などの裁判を担当した政権寄りの裁判官たちは人事の原則を完全に無視し、同じ地位に固くとどまり勤務を続けている。環境部ブラックリスト事件は主犯の元長官が一審で懲役2年6カ月の実刑判決を受け法廷拘束された重罪だった。ところがそれに先立ち請求されたその長官の逮捕状を審査した裁判官は「慣例のため違法という認識は薄かっただろう」との理由で逮捕状請求を棄却した。青瓦台の弁護士を自任する裁判官たちも少なくない。
昨年行われた検事総長への圧力はもはや違法どころか工作とも言えるものだった。政権の違法行為に対する検察の捜査を妨害した李盛潤(イ・ソンユン)ソウル中央地検長らは留任あるいは栄転し、韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相を無罪とするため力を尽くした検事も新たな職責を作って栄転させ、捜査権まで与えている。
現政権が進める検察の捜査権剥奪はこれら一連の法治破壊行為の延長線上にある。国会の立法権を政権擁護に利用しているのだ。もし尹総長が辞任し、検察が政権の忠犬に戻れば、検察の捜査権剥奪などたちまち「なかったこと」になるかもしれない。