自分に不利な記事はとにかく「積弊メディア」だとして責め立てる李知事の姿は、ドナルド・トランプ前米大統領を連想させる。権力が間違った道に進まないよう案内するメディアの役割を全く認めない点が似ている。トランプ前大統領はニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CNNといった有力メディアでも、自身を批判するニュースを報道すると、「フェイクニュース」の烙印(らくいん)を押し、個人のツイッターで「ジャーナリズムの恥」「国民の敵」と攻撃した。その結果、米国社会は分裂し、メディアの自由は大きく衰退した。ファクト(事実)であることが確実な報道より、トランプ前大統領のウソのツイートの方を信じる追従者たちは、大統領選挙の敗北を受け入れずに議会に乱入し、米国の民主主義は深刻な危機を迎えた。
李知事は次期大統領になる可能性が高い人物だ。だが、李知事が自分に不利な事実を報道するメディアを「積弊メディア」に仕立てるなど危険なメディア観を持ち続けるなら、彼が大統領になった場合、韓国は言論の自由がなくなり、民主主義後進国に転落する可能性が高い。李知事がトランプ前大統領のような失敗した政治家にならないようにするには、今からでもメディアに対する考え方を変えなければならない。
米国の第3代大統領トーマス・ジェファーソンは「『新聞のない政府』と『政府のない新聞』のどちらかを選べと言うなら、私は『政府のない新聞』を選ぶ」と言った。ジェファーソンはメディアの自由がすべての自由の基礎であることをよく知っていた。李知事はこの言葉を胸に刻むべきだろう。
イ・ユンジョン記者