この伝統が生きている分野が日本の野球だ。甲子園で行われる高校野球大会の目標が変わらないからだ。甲子園大会は礼儀と節度を強調する。勝ってもいつまでも喜んでいてはならず、あいさつをする時、敗者が頭を上げるまで勝者は腰を曲げていなければならない。選手たちは髪をそらねばならず、原色のユニホームはタブーで、背番号もない。主催者が与えた番号の布を付けるだけだ。甲子園大会に出場したという栄光の象徴だ。勤勉と規律を強調し、怠慢とわがままに警戒する日本学生野球憲章は宮本の独行道に負けない。ほかのスポーツに比べて野球のスキャンダルが少なく、世界の舞台での成功事例が多いのも、子どものころ、甲子園大会出場のために修練を積んだからだという話がある。
日本の野球選手・大谷翔平が米大リーグのオールスター戦に、投手であると同時に打者としても出場する。米国の野球史上、初めてのことだという。大谷は「誰も行ったことのない道を行きたい」と前人未到の投打兼業「二刀流」で米国に進出した。片手にボール、片手にバットを持った「宮本武蔵式二天一流」と言うべきか。紆余(うよ)曲折も多かったが、4年の精進の末、大記録を打ち立てた。投手でありながら本塁打数1位になるという事実自体が驚異的だ。大谷も小学校3年生の時に甲子園を目指して野球を始めたという。大リーグで通算3000安打の記録を立てたイチローも天才ではなく、日々精進するタイプだった。注目すべき精神だ。
鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員