米国シンクタンク「ケイトー研究所」は1990年から2019年までの30年間に米国で逮捕されたスパイ1485人を分析した報告書を今年2月に出しました。このうち約60%の890人が外国人でした。中国人は184人(全体の12.4%)で、外国人の中で最も多くの割合を占めました。
中国の海外諜報活動は、国務院傘下の国家安全部、党の機構である統一戦線工作部、人民解放軍総参謀部が主導しています。世界50カ国以上、170以上の都市に要員を配置していると言われます。
■人海戦術とサイバー侵入
米国と中国、ロシアはスパイ活動に特色があると言われます。ケイトー研究所の報告書に興味深い比喩(ひゆ)が登場しています。
「ある海岸が諜報収集対象だとすれば、ロシアは潜水艦と潜水要員を送って夜にこっそり海岸の砂を集め、米国は衛星データで砂の成分を分析する。一方、中国は1000人の観光客を海岸に送り、彼らが持ち帰った砂を集めて分析する」というものです。
米国が中国人留学生数千人を引き揚げさせ、中国共産党員の入国を制限するなど、中国人移民統制を強化しているのは、まさにこのような人海戦術式の諜報戦略を遮断しようということです。
もう1つの軸はサイバースパイ活動です。今年初め、マイクロソフトのExchange電子メールサーバーが中国人ハッカーたちにハッキングされました。
ワシントンD.C.の複数のシンクタンクと団体、米国防総省に納品する軍需企業をはじめとする多くの中小企業がこの電子メールサーバーを使用しており、被害に遭った企業・機関は約3万カ所に達するそうです。電子メールサーバーがハッキングされれば、内部でやり取りされている電子メールがすべてハッカーの手に渡ることになります。
中国はこのように一方ではさまざまな身分を装った中国人、もう一方ではハッカー部隊を動員して、世界各地で政治・軍事情報、産業・技術情報をかき集めているのです。韓国も主要攻略対象になっていることでしょう。
崔有植(チェ・ユシク)北東アジア研究所長