鄭長官はさらに制裁緩和の前提条件として「非核化」ではなく「北朝鮮による対話への復帰」に言及した。北朝鮮はさまざまな挑発行為によって危機を最大限に高め、その後に平和攻勢へと転換して見返りを手にする「崖っぷち戦略」を繰り返しながら核関連技術を高めてきた。鄭長官の発言は北朝鮮によるこの悪い行動パターンに再び見返りを与え、核開発の時間を稼いでやるという意味に解釈が可能だ。
北朝鮮の挑発から顔を背け、国際社会における非難の声を無視する韓国政府の考え方は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が先月の国連総会で提案した終戦宣言に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)・金与正(キム・ヨジョン)兄妹が前向きな反応を示したことで一層鮮明になっている。韓国政府はこれまで停滞状態にあった韓半島平和プロセスを再び動かすチャンスを手にしたと考え、北朝鮮を刺激することを最大限自制しているのだ。
韓国政府・与党では来年2月の北京冬季オリンピックの前後に4回目の南北首脳会談、さらには南北米あるいは南北米中の首脳による終戦宣言などのシナリオが執拗(しつよう)に語られている。韓国統一部のある高官もこの日、記者団の取材に「時間は十分にある。まだその程度の(準備を行う)時間はある」「他人の祝い事にただ行って握手するだけよりも、事前に南北の間で重要な進展を実現させ、平和の機運や意志などを持っていった方がよいと考えている。今からが非常に重要な時間だ」と意欲を示した。
韓国政府はこのような与党勢力の構想を実現させるため外交に全力を傾けている。文大統領による終戦宣言の提案後、これまで外交安全保障関連部処(省庁)の高官らが米国のカウンターパートと接触し、終戦宣言について意見交換を行った回数は10回以上だ。鄭長官は米国のブリンケン国務長官と2回会談し、韓米の北核交渉代表も5回にわたり対面と遠隔の接触を行い、今週末にも会談などが予定されている。青瓦台(韓国大統領府)の徐勲(ソ・フン)国家安保室長も先週米国を訪問し、終戦宣言について意見交換した。統一部の李仁栄(イ・インヨン)長官と外交部の崔鍾建(チェ・ジョンゴン)第1次官は先日欧州各国を訪問した際、終戦宣言などへの支持を求めたという。