◆なぜ真実は明らかにならないのか  78年の事件当時、飛行機には機長、副操縦士、航空機関士のほかに航法士が乗務していた。当時は慣性航法装置(INS)や衛星利用測位システム(GPS)がなかったため、航法士がジャイロコンパス(航空機の進む方向を示す計器)やLORAN(電波を用いて航空機の位置を示す設備)を用いて航路を観測していた。  外交通商部が外交文書を基に、「事件の原因は航法士の判断ミス」と発表したところ、事故機の航法士だったイ・グンシクさん(78)は「事実とは異なり、内容のほとんどはでっち上げだ」と反発し、政府を相手取って訴訟を起こす動きまで見せている。  イ航法士は本紙のインタビューに対し、「航路の逸脱は航法士の判断ミスではなく、操縦士の過失だった」と述べた。だが、イ航法士と一緒に乗務していたチャ・スンド副操縦士は本紙のインタビューに対し「(イ航法士が)誤った航法を示した」と反論した。また、キム・チャンギュ機長(当時)もチャ副操縦士と同じ主張をしている。  イ航法士は「当時、大韓航空902便はジャイロコンパスが故障しており、飛行時間を守るために安全を無視した飛行をしていた。乗客たちの安全のため、引き返すべきだった」と語った。  また、「機長の話とは違い、当時の航路には厚い雲がかかっており、航路の設定に無理があった。それにもかかわらず、機長は雲の帯に沿って1時間以上も北へ向かって航行したため、航路を逸脱した」と主張した。この過程でイ航法士とキム機長はともに、自分が主張する航路が正しい、と口論したという。  何よりも重要なのは、旅客機がソ連の領空を侵犯したことも知らずに航行し続け、突然ソ連軍の戦闘機が接近してきたため、状況が急変したという事実だ。ソ連軍の戦闘機が旅客機の前に現れたため、チャ副操縦士は呼び出しを試みた。相手との交信がうまくいかないため、手足を動かして相手に非常信号を発信しようとしたという。

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