社会総合
麻薬密輸:体内に隠して運ぶ「人間コンテナ」(下)
仁川空港を利用する旅行客は一日平均3万5000人。このうち2%程度が、税関検査を受ける。その中でも、麻薬所持が疑われ精密検査を受ける人物はごく少数だ。関税庁によると、05年から今年8月までの間に、こうした事例が10件あった程度だという。 税関員は、運び屋のことを「人間コンテナ」と呼ぶ。体内隠匿のやり方はさまざまだ。口から腸まで入れる方法、直腸や女性器の中に入れる方法が多い。税関の関係者は、「韓国では例がないが、太ももや胸などを切開し、皮膚の下に麻薬を埋め込む事例もある」と語った。 今年7月、台湾人3人が仁川空港で捕まった。これらの台湾人は、砲弾型のヘロインの包み(70グラム)を自分の直腸内に入れており、摘発された。包みは3-5センチで、各自の直腸の長さに合わせ、一人当たり5-6個ずつ飲み込んでいた。 台湾人が持ち込もうとしたヘロインは時価36億ウォン(約2億7600万円)相当で、一度に4万人が投与できる量だった。これらの台湾人は、ヘロインをラップとラテックスの指ぬき、コンドームを利用して何重にも包装していた。体内で漏れ出ることのないようにするためだった。さらに一行の所持品からは、「サイズが大きすぎる」「大きさをちょっと縮めてほしい」という苦情が書かれたメモも発見された。 2003年には、コンドームとビニールラップで包装したコカインの包み115個(900グラム)を飲み込み、米国ロサンゼルスから韓国に向かおうとしたペルー人が、機内でショック死するという事件も発生した。解剖の結果、コカインの包み3個が胃酸で溶け、急性中毒の状態に陥っていたことが分かった。 「風船」と呼ばれる麻薬の包みを体内に隠して運搬する運び屋は、通常なら異物感のせいで肌が青白い。機内食はもちろん、水も口にできない。運び屋の不自然な挙動は、税関職員にとって格好の標的となる。 女性の運び屋は、性器の中に麻薬を隠すことを好む。今年8月、コンドームで包んだメスアンフェタミン(覚せい剤の一種)45グラムを体内に隠し中国からやって来た韓国人女性(54)も、こうしたケースだった。腸や直腸とは異なり、空港での検査をパスした後に麻薬を取り出し、目的地に到着するころ再度体内に挿入する、という方法が容易だからだという。 キム・デグン課長は、「下着の中ですら、人権侵害のためむやみに捜索することはできないため、体内は言うまでもない」と語った。最終的には、裁判所から捜索差押令状を発行してもらい、運び屋を説得した上で、裁判所に「人間コンテナ」を連れて行き麻薬を取り出すしかない、というわけだ。