萬物相
【萬物相】平壌で出産したファン・ソン氏
統合進歩党の比例代表候補で、政治団体「希望政治研究フォーラム」の代表でもあるファン・ソン氏は、2005年10月10日の朝鮮労働党創立60周年記念日に平壌で次女を出産した。ファン氏は「義理の両親を連れて平壌に1泊2日の観光旅行に行っていた際、突然陣痛が来た」と説明しているが、ちょうどこの年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権は、韓国政府の許可を受ければ、北朝鮮が体制宣伝のために行っている集団体操「アリラン」の鑑賞を認めることにしていた。ファン氏は北朝鮮に到着した直後に北朝鮮の医師団から診察を受け、医師団は救急車を待機させた。北朝鮮では大きな祝い事が行われる休日だったが、平壌産院の院長は病院にいた。
ファン氏が平壌で娘を出産したことについて、北朝鮮に同調するメディアは「北朝鮮の関係者は統一の赤子出産のために終日力を尽くした」などと報じた。ファン氏の実の母は「娘は平壌に行って興奮したのだろうか。予定日よりもかなり早く生まれた」と喜んだという。長女を帝王切開で出産したファン氏は、次女の出産を控えて10月17日にソウルのある病院で手術の予約をしていたが、平壌に向かう前には「陣痛が来れば平壌で産みたい」と語っていた。
ファン氏は1998年、韓国大学総学生会連合(韓総連)の代表として北朝鮮を訪問したことがあるため「(平壌での)出産は意図的」「遠征出産」など批判の声も相次いだ。「娘の出身地を平壌とし、誕生日を朝鮮労働党創立記念日にしたかったのではないか」というこれらの指摘には一理あるかもしれない。北朝鮮の国籍法によると、北朝鮮国籍は北朝鮮住民の間に生まれた子どもに与えることになっているため、ファン氏の娘の国籍は大韓民国になる。北朝鮮はこの女の子を「統一の玉童女(玉のように貴重な娘)」と呼び、翌年には「玉童女」という演劇まで制作した。このニュースを聞いたファン氏は自らのブログに「玉童女という演劇はどのようなものか気になる。北朝鮮にも自分に似た俳優はいるのだろうか」と書き込んだ。
ファン氏の夫は1999年に韓総連の議長を務め、故・金日成(キム・イルソン)首席の死去については「民族全体の悲報」とコメントし、さらに故・金正日(キム・ジョンイル)総書記による先軍政治を「南韓(韓国)と海外の同胞に、民族に対する矜持(きょうじ=誇り)と自信を与えてくれた」と述べた。国家保安法に違反して9年間逃亡していたが、2008年に拘束され、昨年2月に出所した。夫が刑務所から出てくる日、ファン氏は統合進歩党の李正姫(イ・ジョンヒ)代表から贈られた花束を持って出迎えた。この花束には「統一愛国青年党員歓迎」と書かれていたという。
ファン氏が意図的に遠征出産をしたかどうかは、ファン氏と北朝鮮の医師団以外は誰にも分からない。この問題はつい先日、保守新党「国民の考え」の田麗玉(チョン・ヨオク)報道官がツイッター(簡易投稿サイト)に「北朝鮮への遠征出産は、米国への遠征出産以上に反国家的」と書き込み、ファン氏を非難したことで改めて表面化した。国会議員候補が米国に行って出産すれば問題になるだろうが、統合進歩党は平壌での遠征出産については何ら問題視するつもりはないようだ。平壌生まれのこの女の子が、将来自分の両親についてどのように考えるか気になるところだ。