「なぜイ・スンチョルは入国拒否されて、キム・ジャンフンは入国許可になるんだ?」

 これは、歌手イ・スンチョルさんが9日、日本に入国しようとして入国管理局から入国を拒否されたことに関連し、韓国の官界で交わされた言葉だ。

 イ・スンチョルさんが入国拒否された理由が、8月にたった一度だけ行われた独島(日本名:竹島)公演のためなら、独島コンサート・展示会・広告掲載までしている「独島の守り人」こと歌手キム・ジャンフンさんはなぜ昨年8月、日本に入国できたのだろうか、ということだ。

■イ・スンチョル、たった1回の独島公演で入国拒否?

 日本の外務省は、イ・スンチョルさんの入国拒否理由をはっきり説明していない。日本の入国管理局側はイ・スンチョルさんの入国を不許可としたとき、本人に「メディアに出た件のため」と話したという。イ・スンチョルさんは今年8月に独島に上陸、南北統一の歌を歌い、複数のメディアで報道された。

 また、入国管理局は24年前の1990年にイ・スンチョルさんが大麻を吸引したことに触れたが、同年以降15回にわたり日本に入国している。イ・スンチョルさんが日本の入国に必要な書類を作成しなかった、あるいは作成した書類の内容に誤りがあった可能性もあるが、この場合、日本の当局が外交的なマイナス面を甘受してまでイ・スンチョルさんの入国拒否理由を明らかにしないはずがない。韓国政府関係者は「イ・スンチョルさんがたった1回行った独島公演が入国拒否の理由だと考えざるを得ない状況だ」と語った。

■キム・ジャンフンは独島コンサート・展示会・広告掲載しても入国OK

 イ・スンチョルさんが日本に入国拒否されたことが報じられると、インターネット上には「イ・スンチョルが入国拒否されるなら、キム・ジャンフンは刑務所行き」という書き込みが掲載された。

 しかし、当のキム・ジャンフンさんは昨年8月末、日本の公演プロデューサーらに会うため15年ぶりに日本を訪れた際、空港で何の制止も受けずに入国している。訪日直前、キム・ジャンフンさんはソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の自身のアカウントなどを通じ「私は日本に入国できるのでしょうか?」と書き込んでいる。

 当本人が日本への入国に「不安」を見せたのは、独島関連で数々の活動に携わってきたからだ。キム・ジャンフンさんは韓国のアーティストの中でも最も活発に独島に関する活動をしてきた。キム・ジャンフンさんの名前の前に付く冠言葉も「独島の守り人」「独島歌手」だ。

 キム・ジャンフンさんは毎年、三一節(3月1日の独立運動記念日)や光復節(8月15日の日本の支配からの解放記念日)に定期的に独島に上陸している。昨年3月には中国・上海の韓国文化院で独島をテーマにした写真・映像・オブジェを展示する「独島アートショー」を開催し、その翌月には自身の本籍地を独島に移した。

 2012年の三一節には韓国の広報活動に取り組む誠信女子大学の徐ギョン徳(ソ・ギョンドク)教授と共に米有力紙ニューヨーク・タイムズに「独島は韓国領土だ」と知らしめる広告を掲載した。これに対し、在ニューヨーク日本総領事館は同紙に強く抗議、同紙も「今後、誤解を招く可能性がある広告は載せない」と回答した。キム・ジャンフンさんはこれより前の08年にも徐ギョン徳教授と共に「2000年間にわたり韓国と日本の間の海は『東海』(日本名:日本海)と呼ばれてきた。東海の独島は韓国領土」という広告を出した。

■「『独島歌手』という強いイメージが日本入国を可能にした」

 官界では「キム・ジャンフンさんが日本に入国できたのは、逆説的だが『キム・ジャンフン=独島歌手』というイメージのためでは」という見方が出ている。韓国政府関係者は「キム・ジャンフンさんは独島歌手としてのイメージが強い。日本が今回イ・スンチョルさんに対して行ったような釈然としない理由でキム・ジャンフンさんの入国を拒否すれば、すぐに韓日両国間の外交問題に発展する。イ・スンチョルさんはキム・ジャンフンさんに比べ独島歌手というイメージがはるかに薄い」と語った。

 また、別の韓国政府関係者は「日本がイ・スンチョルさんの大麻吸引歴を引っ張り出し、入国を拒否することで外交摩擦を最小限に抑えようとしているのには、日本に進出した韓国の芸能人たちに『むやみに独島に関する発言や活動をするな』と警告する意図もあるようだ」と話している。

 ところが、2012年8月の光復節に慶尚北道蔚珍郡と独島の間をリレー形式で泳いで渡る活動に参加した俳優ソン・イルグクさんについては、異例なことに日本側が言及し「永続的な入国拒否」方針を表明している。当時の外務副大臣が「(ソン・イルグクさんは)これから日本に来るのは難しくなるだろう。それが日本の国民感情」と発言したのだ。独島関連活動が入国拒否の理由になり得ることを明らかにしたもので、イ・スンチョルさんの入国拒否理由をはっきり言わないのとは対照的だ。

 韓国政府関係者は「この出来事が発生する十日ほど前に当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領が韓国大統領として初めて独島に上陸し、日本は強く反発した。日本が独島関連活動を理由にソン・イルグクさんの入国を拒否した(原文ママ)のは、こうした当時のムードの中で起こった特殊なケースだ」と説明した。

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