「15歳の女子中学生が42歳の男性を愛して性的関係を持ち、出産した後に態度を一変させ、裏切ったというのか」

 24日、大法院(日本の最高裁判所に相当)第3部(主審:キム・シン大法院判事)が、27歳年下の女子中学生に対し性的暴行したとして起訴された芸能プロダクション代表(45)への二審判決を破棄、差し戻したことから、一般市民だけでなく法曹関係者の一部も戸惑いの色を隠せない。

 裁判所の「とんでもない判決」に驚かされることは今に始まった話ではない。しかし、そのほとんどは一審か二審判決でのことだ。それでも国民は「大法院では正しい判断をしてくれるのでは。そのために三審制があるのだから」と気を静めることができた。ところが、今回は国民が納得した一・二審の有罪判決を大法院がひっくり返したことから、国民はいっそう混乱し、ショックを受けている。

 大法院は「法理的見地から厳密に言えば、無罪の趣旨で(二審判決を)破棄し、差し戻しするのが正しい」と説明した。しかし、一般の人々は「妊娠・出産した女子中学生が赤ん坊の父親を訴えたのに、なぜ恋愛感情があるといえるのか」「大法院は法理上のことばかり考え過ぎて機械的な判断を下した」と否定的だ。

 芸能プロダクション代表の男(42)が少女(18)と知り合ったのは2011年8月、ソウル市江西区の病院だった。男は同病院で偶然、少女に会って「芸能人にしてやる」と接近、それ以降、何度も「少女に対し性的暴行をした」というのが検察側の公訴事実だ。当時中学3年生だった少女は、病気の両親にこうしたことを話せなかった。そして翌年4月、少女は妊娠していることに気付いた。男は「親に妊娠したことを話さず、家出しろ。中絶は違法だ」と言い、自分の家で暮らすよう誘導した。

 少女は12年8月の出産直後、男を訴えた。一審は男に懲役12年、二審は懲役9年を言い渡した。一・二審とも「少女が男に送った手紙やショートメッセージなどを見ると、愛情を持っていたともみられるが、妊娠しておなかが大きくなり、家に帰れない状況だったため、自然に湧いた感情とは見なせない」と判断した。

 だが、大法院は「二人は恋愛関係にあった」と見なす正反対の判断を示した。「色とりどりのペンで手紙を書き、シールなどで飾っているのを見ても、少女が男に送った手紙は自身の感情を素直に表現したものと見るのが正しい」というのだ。

 現行法上、未成年者との合意を経て性的関係を持った場合の判断は、未成年者の年齢によって違ってくる。13歳未満の未成年者は「真の合意」があったかどうかに関係なく、加害者を性的暴行で処罰することができる。しかし、13-19歳は偽計・威力があったり、性的関係に対する見返りがあった場合にのみ、処罰できる。つまり、両者の合意の下に見返りのない性交渉があった場合は処罰が難しいということだ。

 しかし、裁判所内部でも「判事たちも納得しがたい判断」と指摘する声が上がっている。少女が出会って数日しかたっていない男を心から愛するようになり、自分の意思で性交渉したというのは常識的に考えてあり得ないというのだ。ソウル高裁のある判事は「たとえ少女が法廷で『(相手の)男を愛している』と証言しても、暴行されて子どもまで生んだ女子中学生の感情をそのまま『うのみ』にできるだろうか」と問い返した。

 大法院が破棄・差し戻ししたため、この裁判はソウル高裁で再び行われることになった。男は現在、姦淫(かんいん)、性的暴行および未成年者誘引で起訴されているが、もし検察が差し戻し審で「偽計による姦淫(相手を誤認・勘違いさせた上での姦淫)」に訴状を変更し、男が少女をだまして暴行したと立証すれば、無罪から有罪判決に変わる可能性もある。この場合、裁判では男が少女を芸能人としてデビューさせると偽って性的関係を持ったのか、「恋愛感情があって性的関係を持った」と少女に思わせたのかが重要な争点となる。

 このような問題を根本的に解決するには、現行法を改正しなければならないという意見もある。ソウル地裁の判事は「13歳という基準は、日本の植民地時代から変わっていない年齢だ。今からでも社会的合意や立法により『合理的な判断が可能な年齢』『性に関し自己決定権を行使できる年齢』を検討し直す必要がある」と指摘した。

ホーム TOP