今月3日、脱北した女性5人が記者会見を開き、自らが経験してきた北朝鮮の実情を証言した。最近、在米韓国人のシン・ウンミ氏やファン・ソン元民主労働党副スポークスマンが訪朝経験を紹介するトークショーを開き、北朝鮮を美化していることに反論するためだ。

 2007年に脱北したイ・スンシルさんは「食べ物を探して街をうろつく『コッチェビ(浮浪児)』暮らしをして、恵山駅のボイラー室で体を休めた。子どもに食べさせるものがなく、牛ふんの中から飼料の豆を探し、口に入れてやったこともある」と語った。06年に脱北したキム・ヨンアさんは「04年に家で、2番目の子どもを一人で生んだが、コメもワカメもなく、胎盤を食べるしかなかった」と証言した。こんな現実があるにもかかわらず、05年に北朝鮮の最高級女性専門病院「平壌産院」でもてなされ、出産したファン氏は「北朝鮮では医師が患者の所にやって来て、予防接種も(患者の所に)来てやってくれる」と語っていた。

 「政治犯収容所から脱出して南(韓国)に来た人が多いことを考えると、自由に開かれている空間のようだ」というファン氏の発言について記者が尋ねると、イさんは自分の体にある傷痕を記者に見せた。「食糧を探して中国との間を行き来し、国家安全保衛部(秘密警察)に捕まって熱湯で拷問され、鎌で肩を切られてできた傷。保衛部の拷問でもこれほどなのだから、政治犯収容所はどれだけひどいだろうか」と問い返した。

 また「脱北者の80-90%は、祖国(北朝鮮)が受け入れてくれるならまた戻りたいと言っている」というシン・ウンミ氏の主張に対し、脱北女性らは「誰がそんなことを言ったのか、証拠を出すべき」と反論した。イさんは「夫には、私が死んだら火葬して、灰はまかずに木の下に埋めてほしいと言った。灰が風で北朝鮮に飛ばされるのも嫌」と語った。07年に脱北したハン・ソンファさんは「清津で学校に通っていたころ、在米韓国人の観光客がやって来たので、顔色のいい30人が集められ、父親の偽りの職業や『首領様のおかげで空腹もなく豊かに暮らしている』というせりふを叫ばされたことがある。シン氏を見ると、当時私たちの演技にだまされた、その在米韓国人を思い出す」と語った。

 脱北女性は、シンさんやファン氏に宛てて「北朝鮮で2年暮らしてみれば、コッチェビの母親の叫びを聞くことができるだろう」と語り、北朝鮮の真の姿を明らかにするための「決着討論」を提案した。姜哲煥(カン・チョルファン)北韓戦略センター代表はじめ収容所出身の脱北者4人も、4日に同様の提案を行った。シン・ウンミ氏らは、これまで「北朝鮮の現実を見た通り伝えただけ」と主張してきた。韓国の国民は既に、誰が真実を語っているのか分かっているが、それでも二人にやましいところがないのなら、脱北者との討論を拒否する理由はない。

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