2010年から4年間にわたり全羅南道で開催された国際自動車レース・フォーミュラワン(F1)韓国グランプリは、今年と昨年は開催が見送られた。F1開催の影響で全羅南道の財政赤字が膨れあがった上に、国も財政面での支援を打ち切ったからだ。F1に伴う全羅南道の累積赤字は1900億ウォン(約200億円)で、サーキット建設のために発行した地方債の発行残高は2900億ウォン(約307億円)に達する。さらに全羅南道はF1のみ不開催に伴う違約金として970億ウォン(約103億円)を支払わねばならない可能性もある。契約に違反した場合、2年分の開催権料に相当する額を違約金として支払うことが定められているからだ。これまで全羅南道の職員はさまざまな批判を受けながら現場に多くの情熱を注いできたが、現実は彼らの思いとは関係なく、今やF1は全羅南道にとって大きな頭痛の種になってしまった。このままではF1を統括する英国のフォーミュラワン・マネジメント(FOM)との国際的な訴訟も覚悟しなければならないだろう。

 一方で今年7月に光州広域市で開催された夏季ユニバーシアードは成功したと評価されている。特に「低費用・高効率」が高い評価の要因とされているようだ。ところが実際にふたを開けてみると、内情はそれほど良いことばかりでもない。光州市はユニバーシアードの開催に向け、2012-14年の3年間に3278億ウォン(約347億円)を投入した。大会の総事業費は国費などを含めて8171億ウォン(約865億円)だったが、光州市は「大会を終えた時点で1999億ウォン(約212億円)を節約した」などと自画自賛している。ちなみに光州市が毎年法律で定められている経費を除いて使える予算は3000億-3500億ウォン(約318億-約371億円)だ。しかし光州市はこのように余裕がない中で大会を開催するため、2046億ウォン(約217億円)の地方債を発行し、大会終了後の投資誘発効果がほぼない競技施設などの建設に予算を投入した。その結果、当然借金は膨れあがった。

 しかも光州市は2019年に世界水泳選手権を開催することになっているが、これも見通しは決して明るくない。当初の総事業費は1149億ウォン(約127億ウォン)とされていたが、大会規定に伴うプールの増築・整備のために550億ウォン(約58億円)以上の追加予算が必要となり、総事業費は2000億ウォン(約212億円)前後にまで膨れあがるのはほぼ間違いない。これは今後大会の開催に向けて、3年立て続けに600億ウォン(約64億円)前後を市の予算から支出することを意味する。しかも韓国政府は来年度予算にこの大会を支援するための予算を組み込んでいない。

 光州市は地下鉄2号線の建設も進めているが、これには総額2兆71億ウォン(約2130億円)という巨額を投入しなければならない。市のある職員は「水泳の世界選手権と地下鉄建設を同時に進めていけば、光州市としては財政面で対策の取りようがない」と実情を明かした。そのため世界選手権開催に向け光州市が抱える事情はかなり深刻になりつつある。

 光州市のように大規模なスポーツイベントを開催する地方自治体には、負債が急激に膨れあがるという共通点がある。先日行政自治部(省に相当)は各自治体における2014年度の資産に占める負債割合を発表したが、それによるとスポーツイベントを開催した自治体はどこも負債の割合が上位にランクインしている。アジア大会を開催した仁川が9.19%で1位、光州が6.59%で3位、世界陸上を開催した大邱は6.27%で4位だ。

 このように一時は韓国国内の自治体が先を争って世界的なスポーツイベントを誘致してきたが、どこも見掛けの派手さとは裏腹に、大会終了後は財政面の大きな負担に直面している。海外からの観光客も、また経済への波及効果も期待されたほどではなかった。あるスポーツ関係者は「地方自治体が大規模なスポーツイベントを将来の発展策として活用するには、あまりにもリスクが大きかった」と指摘する。地方自治体が他山の石とすべき教訓は、このように韓国国内のあちこちに転がっている。

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