「習近平国家主席が主張した『中国夢』とは、(過去に2000年続き、20世紀初めに崩壊した中華帝国を21世紀に新たな形で復活させようとするものだ。経済、政治、軍事大国を超越し、中華帝国の存続を可能にした普遍的価値、普遍的文化を伝統を基盤に再確立しようという中国に意志に注目すべきだ」

 田寅甲(チョン・インガプ)西江大教授(史学)が最近出版した「現代中国の帝国夢:中華の再普遍化100年の実験」(学古房刊)は、経済的飛躍を足掛かりにし、国際舞台に浮上しつつある中国の現在の姿を中華帝国と近代、現代を結び付ける形で統合的に説明しようと試みたものだ。近現代の中国を歴史的連続性の中で理解しようと試みてきた田教授は、この本で特に経済と政治の裏で現代中国の変化を後押ししてきた文化・思想、社会的要素に注目している。

 田教授によると、秦、漢から清に至るまで続いた中国の帝国性には、政治・軍事的覇権、経済力、文化的普遍性という3本の軸がある。アヘン戦争と清日戦争(日清戦争)の敗北に続き、辛亥革命で清が崩壊した際、中国人が受けた衝撃はハードパワーの衰退と並んで、ソフトパワーの没落が原因だった。当面の課題として浮上した近代国民国家の建設に向け、国民党と共産党が主導する西欧式の資本主義・社会主義革命の炎が上がったが、一方では中国の伝統を再構成しようとする試みも見られた。

 田教授は1920-30年代、米国留学派の知識人が中心となった雑誌「学衡」に注目する。西洋の古典文化を重視する米国の新人文主義の影響を受けた人物は中国の「優れた人文主義の伝統」を保ち、永続させることを課題に掲げた。彼らは1919年の五四運動以降、中国社会を襲った新文化運動が西欧追従式に進むことを批判し、「国故(古い伝統)」を土台に「新知(西欧の近代文明)」を吸収することを主張した。しかし、中国的な近代を追求する知的な流れは、啓蒙と亡国を救うという熱気が圧倒する時代の状況に押され、長い間潜伏せざるを得なかった。

 文化保守主義が再び台頭したのは、1990年代に「国学ブーム」が中国の知識人に広まってからだ。80年代までは中国の伝統を清算し、西洋化を通じて未来建設を進めようという全般西洋化論が圧倒的だったが、中国の知識人社会に近代のモデルとして、西洋ではなく、本土性と中華性を強調する流れが急速に広まった。

 田教授は「中国人は西洋の近代をそのまま受け入れるべきだと考えたことはなかった。西欧的な近代を吸収し、『中国的な普遍性』を再構築すべきだと主張した康有為、梁啓超以来の思想的な流れが中国の国力成長に伴う自信の回復として花開いた」と分析した。

 中国の文化保守主義は2008年、米国の金融危機、北京五輪開催が重なり、さらに強化された。儒学復興を主張する新儒家だけでなく、マルキシズムに基づく新左派、西欧式民主主義を志向する自由主義者までもが「中国らしさ」をポジティブにとらえた。その背景には企業経営すら地縁や慣習に依存する中国的な特性がある。田教授は文化大革命の失敗について、儒教が欠落した中国らしさをつくり出そうとした毛沢東の実験が中華文化の重みに圧倒されたと解釈した。

 中華帝国の遺産を新たな帝国を立てる資産として活用することを目指す中国の試みは、対外的には新天下主義論、新朝貢秩序論として表れている。中華帝国の天下主義は自らに自信がある際には寛容だが、覇権が弱まった際には、排他性が強化される。田教授は「現在の中国は成長しているので、当面は慣用的な態度を示すのではないか。ただ、中国はまだ『西欧的スタンダード』に代わる『チャイニーズ・スタンダード』をつくり出す発信力は持てずにいる」と診断した。

 中国の習近平政権が掲げる「中国夢」は、韓国の対外政策面にとっては悩ましい。韓国社会には中国肯定論と中国批判論が交錯している。田教授は「いずれも実証的ではなく、イデオロギー的であることが残念だ。長い歴史的経験に基づき展開される中国の思想的、文化的動きをもっと深く正確に理解すべきだ」と訴えた。

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